原作 |
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監督 |
ニール・ラビュート |
脚本 |
ニール・ラビュート |
キャスト |
ニコラス・ケイジ |
エレン・バースティン |
ケイト・ビーハン |
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配給会社 |
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1973年版の同名カルト映画をえらく気に入ったニコラス・ケイジが、自ら製作を買って出て“リメイク”ならぬ“リ・イマジネーション”して作りあげたのが本作だ。
ある日、白バイ警官(ニコラス・ケイジ)のもとに「行方不明になった娘を探し出して欲しい」と元婚約者から手紙が届く。元婚約者が住まうのは、外界から謝絶されたサマーズアイル島。この島に単身で乗り込んだ警官は捜査を開始するが、島人はなかなか真実を語りたがらない…。
「驚愕のラスト」や「衝撃のラスト」など、映画の宣伝には“劇場まで足を運んでもらう”ための謳い文句が付き物だ。実際に現物のラストが衝撃的であろうとなかろうと、観客が最後まで作品を堪能しようとしまいと、とにかく劇場のチケットを買って館内のシートに座ってくれさえすれば、とりあえずキャッチコピーの目的であるところの動員は達成できるのだ。しかも映画という表現形態の性質上、ネタバレを避けるために「衝撃のラスト」が具体的に何であるかを事前に説明できるわけもない。
かくして、最後の最後まで作品を観なければ「衝撃のラスト」かどうかを検証できるはずもないので、観客は最後までシートに座ったままだ。たとえその作品が「衝撃のラスト」でもなんでもなかったとしても、である。そしてめでたく、宣伝の目的は達成されるのだ…。コアな映画ファンはそんな宣伝事情を周知し、派手な宣伝文句には騙されるもんか、と猜疑心の塊になっているのが実情だ。
本作も例に漏れず、「驚愕のラストシーンを目撃せよ」「衝撃のラストが襲いかかる」とのコピーがそこかしこに踊る。確かにラストには驚かされる。が、『アザーズ』や『ユージュアル・サスペクツ』のようにほんの最後の一瞬に「えぇーーーっっっ?!」となるのではなく、物語の中盤からなんとな?くイヤな予感がし始め、最後にその予感が「やっぱりなぁ」と的中してしまうのである。
だが、そこに至るまでの質感がたまらなくいい。モチーフやディテールは映画の質感を決める重要な要素だが、画面から滲み出る空気感までもが絶妙に計算され、観る者を狂気の世界へと魅了していく。その忌まわしい行為を応援さえもしたくなってくるのだ…“生きたい”という、人間なら誰しもが持つ本能のために。
雌カマキリは交尾のあとに雄を食しにかかり、女王蜂と交尾したあとの雄蜂は必ず死に至る。だがそれは昆虫界だけの話で、我々哺乳類にはそんな生態はないのだ。我々は虫か? いや違う、人間だ。極端な自然回帰が方向性を誤った際の恐怖、行き過ぎたウーマンリブの危険性…そんなことをも考えさせられる作品でもある。
ニコラス・ケイジの本来の特色である“瞳の奥の悲しみ”が存分に生かされたこの秀作は、なんだかんだ言いつつ、実は夢に出てきそうなほど怖い。ポルターガイスト現象や心霊写真よりもあり得ないはずのことなのに、だ。この狂気の世界は、ぜひ劇場でご堪能いただきたい逸品なのである。
・公開 9月1日より新宿トーアほか全国順次ロードショー
"THE WICKER MAN" MOTION PICTURE (c)2006 EQUITY PICTURES MEDIENFONDS GmbH &Co. KGIII and NU IMAGE ENTERTAINMENT GmbH
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