原作 |
本多孝好 |
監督 |
窪田崇 |
脚本 |
清水友佳子 |
キャスト |
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配給会社 |
エスピーオー |
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誰にでも多かれ少なかれ、親子の葛藤というものはあるだろう。その葛藤をいかに克服していくか? 青春期が抱えるそんな苦悩を、切なくも美しいストーリーとファンタジーで包み込み、そして“許してくれる”のが本作だ。
ガン宣告を受けた父(國村準)から病室に呼び出された、22歳の息子(塚本高史)。家業のレストランチェーン経営に勤しむあまり家庭を顧みることがなかった父を、息子は快く思っていなかった。そんな父が息子に託したのは、「自分の青春時代の恋人を探し出して欲しい」という最後の願い。あまりの無茶な頼みごとに、息子は困惑するが…。
友だちや恋人ならば、その出会いは“他人”から始まる。距離があるからこそ、相手を理解しよう理解しようと努力し、互いを尊重しあいながらの付き合いが始まっていく。だが、家族というものは生まれたときからそこにいて、自分と密接に関わっている。距離が近ければ近いほど、改まって「理解しよう」などという気は生まれず、だから尚更、人によっては家族との精神的距離は遠くなってしまう。だが、その家族を“他人”として認識しうるファンタジックな展開で、家族との絆を再確認させてくれるのが本作なのだ。たとえ血が繋がっていて遺伝子を受け継いでいたとしても、違う肉体で異なる心を持っているという点からすれば、家族であっても“他人”なのである。こう書くとなんだか冷たい言い方にも聞こえるが、「親しき仲にも礼儀あり」という諺があるように、適正な距離を持って相手に接することはその関係性を客観的に見つめることに繋がり、相手のこともよく見えるようになる。結果、その距離の中に愛を満たすことが可能となるのだろう。「大人になる」とは、そういうことなのだ。
本作で長編監督デビューを果たしたのは、窪田崇。ミスチルやスガシカオのPV、そして NTT DoCoMo のCMなど、映像界で一際の注目を集める新進気鋭の監督だ。さすがの映像手腕は画面のそこかしこから異彩を放ち、まるで絵画が動いているかのように錯覚するほどひとつひとつのシーンの黄金比は絶妙で、色彩も光の加減も文句のつけようがない。シーンを切り取って額縁に入れ、部屋に飾りたいくらいだ。
原作は、40万部を超える大ベストセラーとなった、本多孝好の『FINE DAYS』に収められた一遍。本多は『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)出身の人気ミステリー作家である。本賞からは『チーム・バチスタの栄光』も映画化され、のちにテレビドラマにもなるヒット作となった。脚本はあの大ヒット作『手紙』の清水友佳子。本作もその圧倒的な作品力で、是非とも大ヒットとなって欲しい良作だ。
・公開 11月1日(土)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー
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