原作 |
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監督 |
スティーヴン・ウォーカー |
脚本 |
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キャスト |
アイリーン・ホール(93歳) |
スタン・ゴールドマン(75歳) |
フレッド・ニトル(80歳) |
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配給会社 |
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誰にでも老いはやってくる。そして死も。ともすれば忌み嫌ってしまうそれらと闘うのではなく、逆にそれらを抱きしめ、楽しんでしまおうというのが本作に登場する老人コーラス隊メンバーたちの生き方である。
アメリカ在住の75歳から93歳までで結成されるコーラス隊、ヤング@ハート。彼らは世界中どこでもそのパフォーマンスで絶賛を浴び、チケットはソールドアウトになってしまうほど。アウトキャスト、ジミ・ヘンドリックス、レディオヘッド、コールドプレイ、ソニック・ユース、ラモーンズ、ボブ・ディラン、トーキング・ヘッズ…等々のロックンロールを、彼らは高らかに、そしてパワフルに歌い上げる。
確かに、老いというものは厄介だ。視力は衰え、耳は遠くなり、体力は落ち、記憶力もおぼつかなくなる。若い頃にはすぐに治っていた病気もなかなか治らず、ちょっとした風邪さえも脅威になり、薬なしでは生きていけない。働き口もなくなり、収入も減り、老人ホームに入るか身寄りを頼るかしなければ雨風をしのぐこともできない。これじゃまるで「シワシワの赤ちゃん」だ。こんな不自由な思いをするのならば、できれば老いずにこの若い肉体のままで一生を終えたい。いや、なるべくなら死にたくもない。だからこそ人は悠久の昔から「不老不死の薬」なるものを追い求めてきたのだろう。
だが、ひとたび「生きがい」というものを得たのなら、そういった苦しみに耐えることができる。それどころか、「生きる」ことそのものに希望さえ見出し、うきうきと毎日を過ごすことだってできる。そんな薔薇色の老後生活を謳歌し、第二の青春を生きているのが本作のコーラス隊メンバーたちだ。ドキュメンタリーで描かれたその映像には嘘など一切なく、メンバーの死という悲しい直面にさえ遭遇してもなお、歌うことをやめはしない。なぜなら歌うことは、彼らにとって生きることそのものだからだ。そしてきっと自らが死に至ってしまっても、悲しみに打ちひしがれはしないのだろう。死後も天国から仲間を見守り、地上のメンバーとともに歌っているのだろうから。
音楽を題材としているからか、ドキュメンタリーにも関わらずミュージカルを観ているかのような錯覚にも陥る。ストーリーもエンターテイメント性も抜群なのだ。いたずらに老いを恐れることが馬鹿馬鹿しく思えてくるような、なんともハッピーな一作なのである。
・公開:11月8日(土)、シネカノン有楽町2丁目、渋谷シネ・アミューズ他にて全国公開
(C) 2008 Walker George Films (Young at Heart) Limited.
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