原作 |
イアン・フレミング『ゴールドフィンガー』(早川書房) |
監督 |
ガイ・ハミルトン |
脚本 |
ポール・デーン、リチャード・メイボーム |
キャスト |
ショーン・コネリー |
オナー・ブラックマン |
ゲルト・フレーベ |
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配給会社 |
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (下DVD発売元) |
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最近では“ベタ”と言ったほうがいいのか。洋の東西、老若男女を問わず、映画やドラマでは『お約束すぎるお約束』が存在する。
ヤクの取引でも殺人の現場でもいい。現場となる倉庫の戸は少しだけ開いて光が漏れている。そしてうっかり覗いてしまった登場人物の背後にはドラム缶が置いてある。置いていなければならない。すんなり目撃情報を警察やらなんやらに持っていかれては、悪玉も困るが観客も困る。
ホラー映画でこれからベッドシーン。ハッスルする相手が主人公とその相方ではない場合、気怠い朝をふたりで迎えることは決してない。女性が風呂に入った折り、浴室内で惨殺されてしまうか、ベットに残された男性死体を風呂上がりのバスタオル一枚で見つけることになる。見つけなくてはならない。むしろ主人公と相方でも情事が性交、いや成功してほしくない。特にいっぽうがアンジェリーナ・ジョリーだったら、お相手はぜひ惨殺されていただきたい。
さらにもうひとつ、時限爆弾が……というところで、『ゴールドフィンガー』である。
「♪ゴ〜ルドフィンガ〜」のテーマ曲が耳に残るシリーズの3作目。ショーン・コネリー演じるイギリスMI6のスパイ、ジェームズ・ボンドが、金の流通をメチャクチャにして国家転覆を企む悪玉・ゴールドフィンガーと対峙する作品だ。
コネリー・ボンドが小粋に悪玉を片づけ、ボンドガールたちとネンゴロになりつつ展開――この展開こそ全シリーズの壮大なお約束なのは言うまでもない(笑)――していくのだが、そのクライマックスに登場するのが“時限爆弾”(しかも冷戦まっただなかの1964年に核爆弾)である。
さて、『お約束すぎるお約束』だと時限爆弾はどうなるか。その仕組みが簡単に解除できるものであろうとも、赤か青かでどちらかのリード線をひとつだけ切らねばならなくとも、その構造がダイナマイト1本であろうとも、核爆弾であろうとも、その爆発が阻止されるのは1秒前なのである。1秒前でなくてはならない。「余裕を持って47秒前に止まった→どんでん返しなくエンディング」などという映画がもしあったら教えていただきたい。ちなみに、劇中で時限爆弾を止める努力をしないで、安全な場所で爆発させる努力をしていたら、それは『西部警察』である。
『ゴールドフィンガー』に登場した核爆弾。なにせ核爆弾であり、その後もシリーズが続いていることからしても、この爆発は当然阻止される(ああ、されますとも)。で、爆弾のお約束どおりになると予想していると……ちょっとその読みはハズれます。ただ、ハズすとしたら“これ”しかないので、1秒前の緊張感より小気味よかった。それだけでも観る価値がある、なんていうのは言い過ぎだとしても、最後まで粋だと感じさせてくれるのは間違いない。どうぞご確認を。
まあなんというか、「ベタがベタを上回った」とでも言いましょうかね。「時限装置はデジタル計時」なんてところまで言ってしまうと、バラしているのも同然だが。
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