原作 |
※原案 オラトゥンデ・オスンサンミ&テリー・リー・ロビンス |
監督 |
オラトゥンデ・オスンサンミ |
脚本 |
オラトゥンデ・オスンサンミ(原案も) |
キャスト |
ミラ・ジョヴォヴィッチ |
ウィル・パットン |
イライアス・コーティーズ |
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配給会社 |
ワーナー・ブラザース映画 |
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まず最初に申し上げておきたいことがあるのだが、通常、映画の宣伝とはネタバレを防ぎたがるものである。観る前から結末や内容がわかってしまっては、謎解きやインパクト等の面白みが半減するからだ。本作も例に漏れず、しかもマスコミ向けパンフにも、ネタバレを避けるように紹介するようにとわざわざ強調しての記載があった。だがそうした意図とは矛盾するかのように、本作の公式サイト、しかもトップページ自体にすでにネタバレ要素がふんだんに含まれている。本作をネタバレなく充分に楽しむには、公式サイトをご覧いただくことなく観賞されることをお薦めする。また、タイトルの意味すらもネタバレなのでここでは敢えて解説しないこととしたい。
アラスカ州北部の町、ノーム。不眠者数300人以上、行方不明者数アラスカ州最多、60年代以降はFBIによる訪問が2000回を超えている。2000年10月、ノーム在住の心理学者アビゲイル・タイラー博士のもとに、不眠症を訴える住民が次々に訪れる。タイラー博士は、催眠療法で彼らが眠れない理由を解明しようとしたが、そこでカメラが捕えたのは、これまで誰も目にしたことのない衝撃の映像。本作は、65時間以上に渡る記録映像及び音声の抜粋と、その再現映像とで構成されている。
マインドコントロールという言葉がある。カルト宗教に何故ハマってしまうのか、を解説する際に多く使われる用語だ。手法には様々な種類があるが、強制のない集団圧力を利用した方法もそのうちのひとつだ。これは、「Aが正しくBが間違い」であると自分自身が識別しているにも関わらず、周りの人たちの多くが「Bが正しくAが間違い」と表明している場合、自分自身の判断も後者に覆ってしまう心理を指す。Bが明らかに間違いであるにも関わらず、だ。(YouTubeにもとてもわかりやすい動画があるので、こちらも併せてどうぞ http://www.youtube.com/watch?v=zyWU2ix8uBU)
大概のマスコミ試写では、観賞後には皆がさっさと席を立ち、出口に向かう。通常の劇場での映画観賞とは違い、余韻に浸りつつ感想を友達同士でダベりながらゆっくりと歩く……などということはなく、マスコミ関係者たちは仕事と割り切ってか、クールにその場を去ろうとする。しかし、だ。私はあんな光景は見たことがない。エンドロールがすべて終わっても、すぐに席を立とうとする人はほとんどいなかった。別に知り合い同士でもないのに互いの顔色を窺うかのようにチラチラと視線を投げ、そして皆が呆然とした表情をしていた。あのクールなマスコミ連中が、だ。
実はこの試写室に入る前に、全員にアンケート用紙が渡されていた。「あなたはこの映像を信じますか? 観賞後、信じるなら“Yes”に、信じないなら“No”のボックスに投票してください」というものだ。私の前を歩いて出口に向かう男性2人は、「No」にその紙を入れた。「これを信じないなんて、粋がってるだけだろう」と思いつつ、私は、人目を気にしつつも勇気を出して「Yes」の箱に入れた。ひょんなことから前述の「強制のない集団圧力」なる心理を知っていたからだ。
世の中には科学では証明できないことが多々ある。だがそれを無きものとして葬り去るのは、無知の極みではないか? どんな事態に遭遇しても、真実のもとに誠実でありたい。真実を真実として見極められる自分でありたい。それこそが、この世に生を受けた自分という存在がまっとうに人生を送れる指針のひとつなのではないか。こんな衝撃の映像を見たあとだからこそ、ことさらにそんなことを感じるのである。
『2012』という映画のキャッチコピーが「これは、映画か」であったが、そのコピーは本作にこそ値する。妙な言い方かもしれないが、映画を観るつもりで劇場には向かわないほうがいい。どんなドキュメンタリーでもあ程度の着地点を用意しているものだが、本作にはそんなものはない。ただただ、衝撃だけが心に重くのしかかるのである。
12月18日(金)、丸の内ピカデリー他 全国ロードショー
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