原作 |
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監督 |
山田洋次 |
脚本 |
山田洋次 |
キャスト |
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配給会社 |
松竹株式会社(製作も) |
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「家族」という、切っても切れない絆。国民的大スター“寅さん”を生み出した山田洋次監督が、どうしようもなく情けなく憎たらしく、でも憎めないキャラクターを創ってくれた。
東京の私鉄沿線、商店街の一角にある薬局。夫を早くに亡くした高野吟子(吉永小百合)は、女手ひとつで一人娘の小春(蒼井優)を育てながら、義母と三人で暮らしていた。小春はエリート医師との結婚が決まり、一家は幸せの頂点にあった。だが結婚式で弟の鉄郎(笑福亭鶴瓶)が醜態を晒し、式は目茶苦茶になってしまう……。
人間、誰しも欠点はある。あのときあんなことをしなければよかった……との後悔の念も、誰にでもある。だが、そんなごく一般人のレベルを遥かに超えた、とんでもなく情けないキャラクターが本作の弟だ。オッサンになってもまだ芸能活動で食うという夢を諦めず、それだけならまだしも、真っ当に生きている姉に金銭面やその他様々な面で迷惑をかけ、それなのに(憎たらしいことに)それを少しも悪いと思っていない。子どもがそのまま大人になったような状態だ。
「こんなヤツ、本当にいたら鬱陶しくてしょうがないな」と、スクリーンを睨みつけながら観ていたにも関わらず、ラストのあのシーンでは不覚にも涙をこぼしてしまった。嫁いだ先で小春が受けた仕打ちもいかにも現代らしく、妙に共感してしまう。ずるいよ、監督。
少しばかり不自然な演出があったのが残念といえば残念だが、恵まれない境遇にある人間であっても懸命に生きているその姿には、やはり心打たれてしまう。市川崑監督の『おとうと』(1960年)へのオマージュという形で作られた本作。ほっこりした気分になりたい方には、特にお薦めの1作。
2010年1月30日(土)全国ロードショー
(C)2010「おとうと」製作委員会
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