原作 |
―― |
監督 |
ピーター・スピエリッグ、マイケル・スピエリッグ |
脚本 |
ピーター・スピエリッグ、マイケル・スピエリッグ |
キャスト |
イーサン・ホーク |
ウィレム・デフォー |
イザベル・ルーカス、サム・ニール |
|
配給会社 |
ブロードメディア・スタジオ |
|
またもやヴァンパイアもので恐縮だが、本作はそんじょそこらのヴァンパイアものではない。通常なら隠れてひっそりと暮らすヴァンパイアが本作ではマジョリティとなり、逆に人間のほうがマイノリティとなった近未来SFなのだ。
西暦2019年。人類のほとんどはヴァンパイアと化し、絶滅危惧種となった人間の大半は生血の採取のために飼育され、逃げ延びた少数の人間はヴァンパイアから逃れるため、隠れながら暮らしていた。そんな折、ヴァンパイア社会に深刻な問題が発生する。食糧供給源である旧来の人間が全人口の5%にまで減少し、血液が枯渇し始めたのだ。絶滅寸前の人間を救うために巨大製薬会社で代用血液の開発を急いでいた研究者(イーサン・ホーク)は、逃亡中の人間たちからの接触を受ける……。
まずもって、この設定が素晴らしい。ヴァンパイアのほうが多数派となるなんて、一体誰が想像しえただろうか。また、そのヴァンパイアたちが自分たちが暮らしやすいように構築した近未来は、科学技術を存分に発揮し、電車に乗りスタバで(血入りの)コーヒーに列をなすなど、我々の生活とさほど変わらない。その描写のひとつひとつがたまらなく可笑しく、新鮮で魅力的なのだ。
イーサン・ホーク演じる研究者は、今の人類で言えばベジタリアンのようなものか。食糧源である人間の命を犠牲にして自分が生き延びることに罪悪感を感じながら暮らし、その唯一の食糧の接種すら拒む。だが、そこはヴァンパイアといえどしがないサラリーマンなわけで、利益だけを重視する上司(サム・ニール)からの圧力と自分の良心の呵責に苦しむ。このあたりも現代の社会の縮図を見事に表し、「人間」から見ても共感を得られるわけだ。
逃げ延びる人間のリーダー格となっているのがウィレム・デフォー。彼が偶然に知りえたあることがこの物語を動かす原動力となり、SFでありアクションであるその絶妙なバランスに寄与している。
スタイリッシュに統治されたかに見えるヴァンパイア社会。一見、人間に見える彼らの中身は実は危険な動物であり、その本能が露わになるギャップは見応えがある。いや、我々人間だって元は動物なのだから、何かの均衡が壊れたらこうなってしまうのだろう……そうした示唆をも含んでいるかのように。
元々はこうしたヴァンパイアものには興味がなかったイーサン・ホークが、脚本を少し読み進めるだけでその魅力に取りつかれ、出演を快諾したという。ぜひ、劇場でその魅力をご堪能いただきたい。
11/27(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
(C)2008 Lionsgate and Paradise Pty Limited, Film Finance Corporation
Australia Limited and Pacific Film and Television Commission Pty Limited.
|