原作 |
―― |
監督 |
クラウス・ハロ |
脚本 |
クラウス・ハロ、ヤーナ・マッコネン(原案) |
キャスト |
カーリナ・ハザード |
ヘイッキ・ノウシアイネン |
ユッカ・ケイノネン、エスコ・ロイネ |
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配給会社 |
アルシネテラン |
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誰の胸にもある、人生への絶望と希望。本作は、それらの真逆の側面を静かに静かに浮き彫りにしていく。
12年もの間、刑に服していたレイラは恩赦により刑務所をあとにする。行くあてもない彼女はヤコブ牧師の家で働くことになる。その仕事とは、牧師宛に毎日届く手紙を読み、その返事を代筆すること。だがある日突然、手紙がまったく届かなくなり……。
生前、マザー・テレサはこう語ったという。「この世の最大の不幸は、貧しさや病ではありません。 誰からも自分は必要とされていないと感じることです」と。神を信じる者もそうでない者も、その心を救うのは、近くにいる人でも遠くにいる人でもいい、とにかく誰かから必要とされていると感じること。それがなければ、たとえ神の王国を自らの内に打ち建てていたとしても、その王国は途端に朽ち果ててしまう。この些細な、だが紛れもない真実を、本作は奇をてらうことなく、淡々と語っていくのだ。
無名の脚本家の作品が監督の目に留まり、映画化され世界各国で配給されるというのは、実はときどきあるシンデレラ・ストーリーだが、本作もそのうちのひとつだ。映画学校の生徒が、先生の言うがままに監督宛にメールで送った脚本。普段なら無名の脚本家の作品など読むはずもない監督が、たまたまインフルエンザで伏せっていたためにうっかりその脚本を読んでしまった。だが、監督は一読で脚本に惚れ込んでしまい、今回の映画化に至ったというわけだ。何事も、やってみるに越したことはないということか。こんなエピソードを聞くと「人生って素晴らしい」と思えてしまう。
作中では、郵便配達人についての描写が見事にぼかされている。だからこそ、鑑賞後にその理由をあれやこれやと思いめぐらさざるを得ない。逆にすべてを描いてしまっては、こうした作品の場合は情緒や雰囲気が薄れてしまうのだろうが、この点はグレーゾーンのままにしておくかそれとも白黒はっきりつけてほしいか、その個人的好みがスッパリ分かれるところだろう。
アカデミー外国語映画賞フィンランド代表作品の本作は、本国のみならず世界各国の映画祭で多数の賞を受賞。派手さも過激さもない本作でこそ、映画の真の実力が問われるのだろう。
2011年1月中旬、銀座テアトルシネマほか全国順次公開
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