原作 |
―― |
監督 |
F・ゲイリー・グレイ |
脚本 |
カート・ウィマー |
キャスト |
ジェラルド・バトラー |
ジェイミー・フォックス |
コルム・ミーニイ、ブルース・マッギル |
|
配給会社 |
ブロードメディア・スタジオ |
|
マイケル・サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』がブームになってからというもの、「正義」をテーマにした作品が多く作られている。本作もそのひとつなのだが、通常のハリウッドものと違い、勧善懲悪のフォーマットどおりには決して作られていない。まさに「正義とは何か」を観客ひとりひとりに考えさせてくれる映画なのだ。
ある日、自宅に押し入られた強盗に妻子を惨殺されてしまったクライド(ジェラルド・バトラー)。事件を担当したエリート敏腕検事ニック(ジェイミー・フォックス)は、裁判で確実に有罪を勝ちとるために主犯格の男に司法取引を持ちかける。実際に妻子を殺したその男はほんの数年の禁固刑で済ませ、あとは自由の身にさせるというのだ。納得のいかないクライドは腐りきった司法を葬り去るため、復讐の鬼と化していく……。
通常は殺人鬼側に観客の感情移入がされることはなく、当然、正義の味方に観客が肩入れすることが普通だ。だが、本作には誰が善人で誰が悪者で……といったお子様向けのわかりやすい設定などない。クライドの復讐の感情は手に取るようにわかるし、自然と共感してしまう。狙われる側のニックは冒頭から、昇進のために道徳や善といった概念を切り捨ててしまっており、こちらのほうが悪に見えてしまう。だから彼がいかに家族を大切にしていようとも、それは「自分たちさえ良ければそれでいい」とのジコチューにしか思えない。市長が提示する回避策にしても、それでいいのか、それしかないのか? と問いただしたくなるほど呆れるものだし、ラストはラストであんな安易なやり方しかしないあたり、やはりニックが悪者に映ってしまう。彼がどんなにいい父親ぶりを発揮しようとも、それがなおさら、彼を偽善者のように仕立てあげるのだ。
惜しむらくは、一昔前の日本の片田舎でもあるまいし、アメリカというあの国で、チャイムが鳴ったからと言って相手も確かめず、ドアにチェーンもかけずに玄関を開けるなんてあるのかということ。なぜニックが司法取引に持ち込まざるをえなかったのか、その過程がほとんど描かれず、台詞だけで説明されていること。娘の演奏シーンがアテブリなこと。すべてを台無しにするほどの致命傷ではないが、せっかくならこの辺りも徹底的に描きこめばもっとリアリティが増しただろう。
『SAW』ばりの残虐シーンが映し出されるかと思いきやここではそれが売りではないらしく、そのあたりはさりげなくカット。家族や友人、恋人、とにかく誰かと一緒に見て「正義とは何か」を語り合う材料としては申し分ない作品。もちろん、二大スターによる予測のつかない展開が次々と繰り出される様は、エンタメとしても存分に楽しめる逸品だ。
1月22日(土)TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズみゆき座他 全国ロードショー
(C)2009 LAC FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
|