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■ソウル・キッチン 【洋画】




原作 ――
監督 ファティ・アキン
脚本 ファティ・アキン
キャスト
アダム・ボウスドウコス
モーリッツ・ブライプトロイ
ビロル・ユーネル、アンナ・ベデルケ
配給会社 ビターズ・エンド

ベルリンでは『愛より強く』でグランプリ、カンヌでは『そして、私たちは愛に帰る』で脚本賞、そして本作でヴェネチアの国際映画祭審査員特別賞とヤングシネマ賞のダブル受賞を果たした監督、ファティ・アキン。36歳という史上最年少の若さで、三大映画祭のコンペ部門すべてで受賞という偉業はジャン=リュック・ゴダールすらも成し遂げていない快挙だ。その天才監督の最新作『ソウル・キッチン』は、本国ドイツで130万人動員の大ヒットを記録したドタバタかつハートウォーミングなコメディだ。

ハンブルグの大衆レストラン「ソウル・キッチン」を経営するジノス。恋人は仕事で上海に行くことになるが、ジノスは店を閉めて彼女を追いかけるわけにはいかない。ひょんなことから高級レストランで新進気鋭のシェフの料理に惚れ込み、彼をスカウトしたジノス。かくして新生「ソウル・キッチン」が幕を開ける……。

北ドイツに位置し、ベルリンに次ぐ第二の都市、そしてかのビートルズを産んだ街でもあるハンブルグ。この「第二」というのがミソなのだろう、あたかも大阪のノリのように物語は軽快に展開する。主人公はヘルニアになるわ、仮出所した兄は主人公にたかるわ、天才シェフは飲んだくれで喧嘩っ早いわ。まぁとにかくどの駒を動かしても笑いが起きる仕掛けが盛りだくさんに配置されている。しかも不幸な出来事がこんなに盛りだくさんなのにも関わらず、彼らは何度も立ち上がり、人生の荒波をずっこけながら泳ぎ渡っていくのだ。

師事していたプロデューサーが亡くなり、その悲しみから脱出するためにこの映画を作ったという監督。亡くなる間際、師は監督にこんなことを告げたそうだ。「人の言っていることなど気にせず、心から作りたいと思えばその作品を作ればいいんだ」と。自分の成功の奴隷になるべきではない、作りたいものを作るべきなんだ……と悟った監督が作り出したパワーあふれる本作は、あなたの人生にもエネルギーを与えてくれるだろう。おいしいおいしい料理をたらふく食べたときのように。


1月22日(土)より、シネマライズほか全国順次ロードショー

http://www.bitters.co.jp/soulkitchen/

記:林田 久美子 2010/12/30