原作 |
東野圭吾『白夜行』 |
監督 |
深川栄洋 |
脚本 |
深川栄洋、入江信吾、山本あかり |
キャスト |
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配給会社 |
ギャガ |
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原作は累計で200万部以上を売り上げた東野圭吾の代表作。すでに舞台化やテレビドラマ化されており、おとなり韓国では映画化もされている『白夜行』。日本では映画化は不可能かと思われた衝撃のサスペンス作品を、33歳(撮影時)の新星・深川栄洋監督が渾身の映像化を果たした。
密室となった廃ビルで、質屋の店主が殺された。決定的な証拠がないまま、事件は容疑者の死亡によって一応の解決を見る。しかし、担当刑事の笹垣(船越英一郎)だけは腑に落ちない。加害者の娘で、子供とは思えない美しさを放つ少女・雪穂と被害者の息子で、どこか暗い目をしたもの静かな少年・亮司の姿がいつまでも目蓋の裏を去らないのだ。やがて、成長した雪穂(堀北真希)と亮司(高良健吾)の周辺で不可解な事件が立て続けに起こり、意外な関係が姿を現し始める――。
この映画の前半部分の映像が私の目を引いた。暗く彩度の低い渋い映像がこの物語の世界観を表現するための重要な要素となっている。この手法はフィルム現像時の銀残しといって、この作業により画像の暗い部分が極端に暗くなり、コントラストが強く、彩度の低い画像になる(映画『セブン』のあの映像、ということでおわかりいただけるだろうか)。この鮮明ではない画像処理がこの映画の時代背景、そして“闇”というものを見事に表現している。
美術や衣装に関してもかなりのこだわりがある。たとえば昭和の家庭にある家具がとてもリアルに表現されており、少年時代に私の家にあった家具がまさにそこにある。そういった緻密に表現された映像がこの映画をささえている。
原作『白夜行』は、二人の主人公の内面の心理描写がいっさいされていないのが最大のポイントであるが、本作での雪穂と亮司を見る限りその辺りをうまく表現出来ているのではないか。記者会見のコメントにもあった、雪穂を理解し共感するのではなく、客観的に彼女をとらえる演技、それがこの映画の原作に近い表現が出来ているところではないかと思う。原作者・東野圭吾に「映画として力があったのではないでしょうか」と言わせる仕上がりになっているのも頷ける。
また、堀北真希の透き通るような容姿もこの映画をもり立てているが、普段テレビドラマで見せる演技とは“真逆”な船越英一郎の演技もみどころと言っていいだろう。
原作やドラマなどから、まだこの物語に触れていない観客には、衝撃的な出会いになるのは間違いない。ひとつの殺人事件の謎と、別々の世界で生きる雪穂(陽)と亮司(陰)の周りで次々におこる不可解な出来事、その点と線が繋がるラスト30分の展開――雪穂と亮司の壮絶なる19年の謎が解き明かされたときに、あなたの心はいったい何をつかみ取るだろうか。
原作は850ページにおよぶ長編。2時間29分の映画では描ききれないストーリーも多いので、映画鑑賞後に原作に浸ってみるのもまた面白い。
1月29日(土)全国ロードショー
(C)2011 映画「白夜行」製作委員会
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