原作 |
乙一 |
監督 |
天願大介 |
脚本 |
ー |
キャスト |
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配給会社 |
ー |
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文庫だけでも三十万部を記録するベストセラーの、乙一(おついち)による同名タイトルの映画化作品が本作だ。失明して自分の世界に閉じこりがちなミチル(田中麗奈)と、職場での陰湿ないじめに辛い思いをするアキヒロ(チェン・ボーリン)。殺人事件をきっかけに、二人の奇妙な共同生活が始まっていく。
失明した女性が主人公、しかもタイトルに「暗い」などと冠されていることもあり、暗澹たる映画を想像してしまう。確かに、シーンの多くは静かに進行していく。主人公のおっとりとした性格、青年が外国人であるがゆえの無口さ、そして殺人の瞬間でさえも何らかの言葉が響き渡ることはない。
だが、決して「暗い」ということはない。二人の心の触れ合いはまるで初恋のように、お互いを探りながら初々しく進んでいく。主人公の盲目の悲しみと、外国人労働者ゆえに疎外された青年の苦しみが、無意識レベルで二人をつなぎあわせる。
五感を超越したところで生まれる相手への興味関心は、崇高な感情さえ伴うかのように、そして昔からもともと肉親であったかのような感覚を覚えさせる。それは言葉などで語られるものでなく、お互いがお互いの心だけで相手の思いを理解した結果だ。シーンの静寂によりその心理演技は絶妙に生かされ、観る者の心にストレートに響いてくるのだ。
物語の端を発した殺人事件も驚くような展開を見せ、決して一筋縄では終わらせない。是非、原作とあわせて楽しみたい作品だ。…犯人がなぜ被害者を殺したのか、その理由がきちんと伝わってこなかったことだけは、非常に惜しいが。
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