原作 |
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監督 |
ニルス・タヴェルニエ |
脚本 |
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キャスト |
マルゴ・シャトリエ |
ニコラ・ル・リッシュ |
キャロル・ブーケ |
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配給会社 |
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踊りを禁じられた国に生まれたオーロラ姫には、天賦の踊りの才能が備わっていた。国の財政難を打破するため、王は政略結婚のための舞踏会を開くが…。
パリ・オペラ座の全面協力のもとで描かれるファンタジックなラブストーリーの誕生だ。ミュージカルが歌によって場面や登場人物の気持ちを表すように、本作はバレエによってそれらが表現される。主演のマルゴ・シャトリエはパリ・オペラ座バレエ学校で校長に直接師事するほどの逸材で、その肢体からは美しさ、気品、清らかさがほとばしりでる。姫が好意を寄せる画家役には、エトワールの称号を持ち芸術文学勲爵士でもあるパリ・バレエ界の貴公子、ニコラ・ル・リッシュが扮する。役者たちのダンスは情感のこもった台詞のようで、表情豊かに語りかけてくるのだ。ダンスによる表現という新境地を開いた本作は、夢のような輝きをスクリーンから放ちながら、観る者に深い示唆を与えてくれる。
他人は自分の思いどおりにはならない。行動も心もだ。それを無理に捻じ曲げようとすれば歪みが生じ、悲劇が生まれる。変えることができるのは自分の心だけだ。だがこの原理をないがしろにし、支配欲をむき出しにした瞬間に悲劇は始まる。
国を救うために王は大切な娘を身売りせざるをえなくなる。だが、元はといえば国の長である者が世の原理に反した考えを持っていたがゆえに、同類相通じるように悪しき事態が呼び寄せられてしまったのではないか。各人が自由にその人生を謳歌するのが栄えるべき国だとすれば、この国は滅びるべき思想を持った国だったのである。
ファンタジーを超えた深いメッセージ性を持った本作に、心洗われるような感覚を覚えるのは私だけではないだろう。
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