シネマピア
狩人と犬、最後の旅
ドキュメントタッチの映画が観る者の胸をここまで熱くする理由というのは何であろう。『WATARIDORI』然り、『ディープブルー』然り。圧倒的なまでの自然のありのままの姿に、我々の無意識が反応するのだろうか。はるか昔、ここまで文明が発達していなかったころ、我々がまだ自然の懐に抱かれながら暮らしていたころ…そんな魂の記憶を呼び覚ますのだろうか。
半世紀にわたってロッキー山脈で罠猟を続けてきた最後の狩人。森林の伐採で動物たちが年々減少するなか、彼は狩人を続けていくことの困難に直面する。そんな折、猟ができない子犬と出会った彼は、その関係性にある希望を見出していく。
都会に住む人間にとって自然とは美しいものであるが、自然の真っ只中に住む人間にとっては、ときにそれは脅威となる。「美しい」などと言っていられない厳しい事態が、容赦なく襲ってくることがままあるのだ。都会の人間にとってひとひらの雪はこの上なく美しいものであろう。だが、それが降り積もって生活を脅かす雪国の人間にとっては、落胆するほどの悩みの種だったりするのだ。本作はそうした自然の脅威を真正面から見つめ、飾ることなく取り出して我々に真実を見せてくれる。
劇中で主人公は言う。「人間も自然の一部だ」と。真に自然を愛するとは、いかなることであるか。腫れ物に触るかのような接し方をするのでもなく、かといって邪険に扱うでもなく。自然をひとつの生命体として捉え、慈しみをもって接することが大切なのだろう。そんな崇高な心持ちにさせてくれた本作に、感謝の気持ちさえ湧いてくるのである。
狩人と犬、最後の旅 コレクターズ・エディション(DVD)
監督:ニコラス・ヴァニエ
脚本:ニコラス・ヴァニエ
出演:ノーマン・ウィンター/メイ・ルー
ジャンル:洋画
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