シネマピア
ユナイテッド93
9月11日のアメリカ同時多発テロ事件において、唯一目的地に到達しなかった旅客機、ユナイテッド93便。飛行ルートからはキャンプ・デービッドかホワイトハウスへ向かおうとしていたことが推測されるが、機はペンシルバニアに墜落し、乗客乗員の全員が死亡した。テロの目的を阻止したのである。
亡くなった40名の家族や友人、9.11委員会らへのインタビューをもとに、悲運の墜落を遂げるまでをドキュメンタリー・タッチで綴った本作。スター俳優などは一切起用せず、知名度のあまり高くない俳優だけのキャスティングで事実を淡々と追う。なかでも、事件当日に重要な任務を負った連邦航空管制センターの職員本人が自身の役を演じていることは、より本作の現実味を増している。彼は語る。「この作品は、普通の人々が何のマニュアルもなしに極限状態に立ち向かえるかを描いているのです。」と。
「ユナイテッド93の乗客は、“9.11以降の世界“に生きた最初の人々だった」とは監督の言だ。“以降に”、“生きた”とはどういうことか。テロという卑劣な脅威に屈することなく、自らの意志でその危機に立ち向かった人たち。信念のもとに最後まで行動し続けた人たち…そう、自分の命さえも顧みず。
彼らが最後に家族たちに残した言葉は、一様にして「愛している」だったという。怖がるでもなく、憎むでもなく、ただただ、この世界でいちばん崇高な気持ちを、いちばん大切な人たちに伝えていたのだ。単純でありながら美しく、明快でありながら何よりも深いこの気持ち。この“愛”の気持ちを、すべての人々がすべての人々に持つことかできたなら、おのずとこの世界から争いなどは絶えていくのだろう。愛と争いは対極にあるものなのだから。
ユナイテッド93 プレミアム・ベスト・コレクション(DVD)
監督:ポール・グリーングラス
出演:コーリイ・ジョンソン/デニー・ディロン/カモ・マサト
配給:UIP映画
ジャンル:洋画
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