シネマピア
夢遊ハワイ
タイトルには“ハワイ”とあるが、映画にハワイの風景は一秒たりとも出てこない。本作が指すところのハワイとは、“ハワイのような楽園”という意味なのだ。
本作の舞台は台湾。兵役終了を間近に控えた主人公がある夜、夢を見る。小学校時代に自分に優しくしてくれた同級生の女の子が、海辺の砂浜で死んでいたのだ。夢から目覚めた主人公は、彼女の身を案じてその消息を調べはじめるが…。
兵役という、日本にはない制度が当たり前のように存在する国、台湾。本作で描かれるところの兵役は、想像と違い結構ゆるゆるな感じだ。先日来日した主演のトニー・ヤンに聞いたところ、ほとんど現実に近いかたちでの描写であるという。日本でいうなら、さしずめ“かなり厳しい体育会系”といったところだろうか。もちろん、現実には本物の銃が使われ、あまりにもの規律違反にはきつい制裁が加わるのだが。
若かりし青春の頃というものは、誰の心にも甘く、そして少しだけ苦い。胸ときめく異性は自分の命よりも大切なもののように映り、募る恋心は小さな胸をこれでもかというくらいに埋め尽くす。かと思えば、どうでもいい小さな失敗や友人が発した何気ない一言は、夜も眠れぬほどに頭にこびりついて離れない。少しの出来事からあらゆる事態を想像し、しかもそれを誰にも言えぬままに心の中で増幅させ、しまいにはありもしない事実を自分ひとりだけの頭の王国の中に作り上げてしまう。そんな、ピンボールの球のように様々なものに翻弄される青春時代というものを、懐かしく思い起こさせてくれる1本なのである。
夢遊ハワイ(DVD)
監督:シュー・フーチュン
出演:トニー・ヤン/ホァン・ホンセン/チャン・チュンニン
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.muyu-hawaii.jp/
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