シネマピア
それでもボクはやってない
『Shall we ダンス?』の周防監督が日本の刑事裁判制度の問題点を浮き彫りにさせる社会派ヒューマン・ドラマの登場だ。
就職活動中の主人公は面接へ向かう途中、電車の中で痴漢に間違われて現行犯逮捕される。無実を主張し続けるうち、ついには検察から起訴されてしまうが…。
日本にも裁判員制度の導入は着々と進んでいる。アメリカの裁判モノでは見慣れた光景だが、これが日本で正常に機能するのだろうか? アメリカでもあれだけ問題があふれているのに、果たして日本ではスムーズに行くのだろうか?
思えば、アメリカと日本では国民性の違いがかなりある。アメリカは自分の意見を言うことを躊躇などしないし、逆に言わないことのほうが“自分がない”と思われてもしまう。日本はといえば、残念ながらその逆だ。“出る杭は打たれる”、“長いものには巻かれろ”、そんなことわざが闊歩するとおり、よく言えば“調和”が重んじられ、悪く言えば没個性の最たる風潮だ。
証人ならまだわかる。自分が見聞きしたことを述べればよいだけだから、善も悪も罪も罰もない。だが、裁判員となって人様の罪に裁量を下せるだろうか? そもそも、それが罪だと確信できるだろうか? 犯人の巧妙な嘘を見抜けるか? 冤罪を被せられた無実の人の、悲痛な叫びを信じることができるだろうか?
4年以上に及ぶ徹底取材を敢行し、逮捕から留置がいかに簡単に行われるか、また金銭や労力を理由に示談を勧める司法の安易さが克明に描かれる本作。
理不尽な冤罪と戦う主人公の悲しさ、虚しさ、勇気。様々な人間模様を絡み合わせて周防節が炸裂する、見ごたえのある作品だ。
それでもボクはやってない スタンダード・エディション(DVD)
監督:周防正行
脚本:周防正行
出演:加瀬亮/瀬戸朝香/山本耕史
配給:東宝
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.soreboku.jp/index.html
© 2006-2007 フジテレビジョン アルタミラピクチャーズ 東宝
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