シネマピア
チーム・バチスタの栄光
だいたいからして、ミステリーものにおいての犯人というものは、善良そうで人に優しく、気遣いもあり、挨拶もキチンとしており…等々、いちばん犯人らしからぬ人物が犯人なものである。「あの人が、まさか。信じられない」などといった品行方正な人物が犯罪者であり、いちばん怪しそうな人物が犯人であることは、まずありえない。これはミステリーものに限らず、現実社会でニュースを賑わす事件でもそうなのであるが…。
“バチスタ”とは、拡張型心筋症に対する手術法の呼び名である。?“チーム・バチスタ”として、成功率の非常に低い手術に日夜取り組む7人の医師たち。優秀な医師チームによって執り行われてきたこの手術は、それまで世界でも抜群の成功率を誇ってきた。ところがある日を境に、手術が立て続けに失敗し始める。“犯人”を捜すため、医師たちへの聞き取り調査が開始されるが…。
本作は「このミステリーがすごい!」第4回大賞受賞のベストセラー『チーム・バチスタの栄光』の実写化作品だ。流石の大賞受賞作だけあり、ストーリー展開は最後まで観る者を飽きさせない。キャスティングも秀逸で、“殺人”の最中に犯人が見せる表情などは、不気味さを通り越して背筋が凍るかのような感覚をも覚える。?怪優としての位置づけを不動のものとしてきた阿部寛もまた、他作品と比べても遜色のない“味”を醸しだしている。通称“愚痴外来”と呼ばれる担当医と患者とのやり取りも、「人間」というものを如実に表しており、ほっこりとした気分にさせてくれる。
…だが、しかし。ネタバレになるといけないので多くは語らずにおくが(勘のいい方は犯人が判ってしまうかもしれないのでここから先は読まずにいただきたい)、冒頭で語ったように、ミステリーの王道中の王道のような人物が犯人だったのだ。この手の作品が好きな私としては「コイツが犯人か?」とアタリをつけながら観ていたのだが、その予想が的中してしまった。嬉しいやらそうでないやら、少々複雑な気持ちになってしまったのである。
「犯行現場は、半径10cm。この7人の中に、いる。」このコピーでGOを出した宣伝担当者さんは、すごい度胸の持ち主かもしれない。
チーム・バチスタの栄光(DVD)
チーム・バチスタの栄光(単行本)
原作:チーム・バチスタの栄光 海堂尊(著)
監督:中村義洋
出演:竹内結子 /阿部寛 /吉川晃司
ジャンル:邦画
© 2008 映画「チーム・バチスタの栄光」製作委員会
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