シネマピア
崖の上のポニョ
宮崎アニメには大概、地球上には存在しない動物や、人間と動物との中間のような生き物が登場します。『風の谷のナウシカ』では巨大な虫の王蟲(オーム)、『となりのトトロ』では妖怪のようなトトロ、『紅の豚』では豚の顔を持った人間。そしてその動物はただの動物として描かれるのでなく、人間となんら変わらない存在価値を持つものとして位置づけられています。
本作の主人公はポニョという名の、人間の顔を持った魚の女の子。ある日、海辺に打ち上げられたポニョは、崖の上の一軒家に住む人間の男の子、宗介に助けられます。宗介に恋をするポニョ。そして宗介もポニョを好きになり…。でも、ポニョは魚。人間の宗介と結ばれることはできるのでしょうか? アンデルセンの『人魚姫』をモチーフに、人間の男の子との恋の物語が展開していきます。
ご存知のとおり、宮崎アニメは日本で絶大な支持を受けています。日本では旧来から、稲荷神社として狐を神として祀ったり、狸やイタチが人を化かすと信じられていたり、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪が多くの人に親しまれるなど、そうしたアニミズム信仰が強く根付いている文化を土壌に持っています。そうした、人間とは異質のものへの愛着がある国民性があるからこそ、宮崎アニメが作りだす人間と動物を掛け合わせたような新たなキャラクターは、非常に親しみを持って受け入れられるのではないでしょうか。
本作でもそこかしこに宮崎アニメのモチーフが登場します。CGを一切使わずに手書きのみで作られたアニメーションは、懐かしさとともに迫力のある存在感をスクリーンから放ちます。
では、CG使用がないことで画面の動きは不自然になっているかというと、まったくそんなことはありません。フルCGを使っているにも関わらず、「人間って普通、ここでこう動くよね?」という場面でまったく動かないキャラクター作りで、観る者を一気に現実の世界に引き戻してしまうような某有名巨匠作品とは違い、キャラクターの動作の不自然さがまったくないのです。このあたりも、宮崎アニメが他とは一線を画して絶大な支持を受けている1つの要因でしょう。
通常、マスコミ用のパンフレットというものは「である」「なのだ」という文体のことが殆どです。ですが、本作は珍しいことに「でした」「です」調で書かれていました。本作の持つ、ほのぼのとした温かい雰囲気を伝えられるよう、この文章もそれに倣ってみました(「気持ち悪い」とか言わないで)。絵本のような温もりを、ぜひ劇場でご体感ください。
崖の上のポニョ(Blu-ray)
監督:宮崎 駿
脚本:宮崎 駿
出演:山口智子 /長嶋一茂 /天海祐希
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.ghibli.jp/ponyo/
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