シネマピア
我が至上の愛〜アストレとセラドン〜
恋愛において誤解はつきものである。ふとした言葉、ふとした行動、ふとした表情。相手に心底惚れこみ、ときには崇拝するかのように憧れている恋愛ならなおのこと、相手の些細な動きに過敏なまでに反応してしまい、てこの原理のように自分の心は右往左往してしまう。それは現代も、そして精霊たちが人間とともに生きていた古代からも変わらない真実なのだろう。
ローマ時代、羊飼いのアストレとセラドンは純粋な愛を育んでいた。しかしアストレはセラドンが浮気をしたと思いこんでしまい、「自分の目の前に二度と現れないで欲しい」と彼を拒絶する。絶望したセラドンは入水自殺を図るが、ニンフ(精霊)に助けられ、死を逃れる…。
フランス映画界、ヌーヴェルヴァーグの巨匠、エリック・ロメールが自ら「長編最後の作品」と宣言した本作。1607?1647年にオノレ・デュルフェが書いた原作『アストレ』をもとに、独占欲、嫉妬、献身、憂い、憧れ、希望など、恋の恋たる所以をふんだんに盛り込みながら映像は流れていく。無論、CGなどは全く使わず、一瞬一瞬のコマ割という派手な演出でもなく、カメラはゆるやかな時間を柔らかく撫でるように彼と彼女の恋を包み込む。緑豊かな自然の風景はその恋の純粋たる要素を更に引きだし、現代人が忘れていた大切な何かを心に呼び起こしてくれる。
時代は今まさにエコ。それはブームでありまたファッションでもあり、エコをアピールすることが一種のステータスのようにもなっている。それを良しとするか悪しきとするかの論議は別として、まさに今の時代だからこそ受け入れられる作風ともいえるのではないだろうか。穏やかなこの本作に身も心も任せてみれば、日常のすべての喧騒を忘れて癒しを得ることになるだろう。
アストレとセラドン 我が至上の愛(DVD)
キャスト来日インタビュー
原作:オノレ・デュルフェ『アストレ』
監督:エリック・ロメール
脚本:エリック・ロメール
出演:アンディー・ジレ /ステファニー・クレイヤンクール /セシル・カッセル
配給:アルシネテラン
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/wagaai/
© Rezo Productions / C.E.R.
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