シネマピア
アルマズ・プロジェクト
一見、よくありがちなドキュメンタリー風映像にも見える本作。だが思わず底知れぬ恐怖を覚えるのは、その映像が実際の宇宙船内のものだという事実だ。
1998年11月。ロシアの極秘宇宙ステーション「アルマズ号」がレーダーから消える。地球との連絡が途絶え、次第に常軌を逸していく男女6人の乗務員たち。そして彼らの身に次々と降りかかる奇異な現象の数々。いったい、何が彼らの身に起こったのか……。異常事態が起こってから大気圏に突入するまでの驚愕の4日間が、なんらの演出もなく赤裸々に映し出される。
本作は映画であって映画でない。劇場での公開という形態をとっているから映画の範疇になるにはなるが、厳密にはそうでない。映像のほとんどは回収されたブラックボックスを編集したものだからだ。手法としては『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、『クローバーフィールド/HAKAISHA』を彷彿とさせる。だがその2作と決定的に違うのは、本作は撮ろうとして撮った映像ではないということだ。何かの時のための記録映像なだけであったはずが、起きてはいけないその“何か”が実際に起きてしまい、結果的にエンターテイメントとして成立してしまったのだ。
恐れるべきは、乗務員たちを脅かしたその“何か”が、我々人類のそう遠くない未来にも訪れる可能性があるという、本作終盤の示唆だ。その時がくるまでに、我々はその謎を解くことができるのか。人類の脅威となるかもしれないその“何か”を阻止することができるのか。我々人類の智慧を集結しても、それは到底なしえないことなのかもしれない。
作り物のホラーとは比べ物にならない“本物の恐怖”がひしひしと押し寄せてくる、このおぞましさ。夜中にふと目覚めて本作を思い出したとき、宇宙へと通じる夜空の星々は決して美しいものではなく、暗黒の恐怖へと様変わりしてしまうのだ。
アルマズ・プロジェクト(DVD)
監督:クリス・ジョンストン
脚本:ジェームズ・フォルク/スコット・アルトメア
出演:イヴァン・シュヴドフ /イナ・ゴメス
配給:プレシディオ(提供・宣伝も)
ジャンル:洋画
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