シネマピア
BECK
「演出に驚かされた」、このひとことなのである。
鑑賞前、そして鑑賞中。私も自分なりの『BECK』を想像していたが、この映画の肝となる部分の演出は、まさに鳥肌が立つ勢い。
「原作のイメージを損なわず、また観客それぞれのイマジネーションを高める」
堤幸彦監督と原作者であるハロルド作石氏が何度も打ち合わせしたというこの狙い。そして、
「漫画『BECK』を愛してくれている人、この映画で初めて『BECK』を知る人、映画の中で自分の『音楽』を探してみて下さい」
という、生みの親である原作者の言葉。
両者の思いが通じ合った、素晴らしい演出と観賞後感であった。
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平凡な毎日を送るごく普通の高校生コユキ(佐藤健)。彼が偶然にもニューヨーク帰りの天才ギタリスト・南竜介(水嶋ヒロ)と出会うことから物語は始まる。
そこに、喧嘩早く曲がったことが大嫌いな性格のボーカル・千葉恒美(桐谷健太)。冷静で聡明なベーシスト・平義行(向井理)。コユキの親友で、竜介や平も認めるほどのドラムの腕前を持っている・桜井裕(中村蒼)の『BECK』メンバー。そして南竜介の父違いの妹でユキの才能をいち早く見出す南真帆(忽那汐里)。彼ら彼女らが加わって、コユキと彼らの人生は大きく動き出す――。
今が旬な俳優陣と今年ブレイク必至のポッキー娘・忽那汐里の共演にも注目しつつ、音楽映画であるこの作品のみどころは、前記からおわかりのようにやはりライブシーン。本作のために制作されたオリジナル楽曲は30曲あまりと言われており、そのクオリティの高さ、そしてメンバーそれぞれが猛練習したという“演(奏)技”が、みごとに“ケミストリー”(←劇中にて確認を)している。
特にエンディングのロックフェスのシーンは圧巻。
『TRICK』のようなコメディや『明日の記憶』のような社会派まで手がける堤監督だが、ミュージックビデオも多数製作しており、その臨場感は本物さながら。第1回フジロックでのレッド・ホット・チリペッパーを思い起こさせる演出である。
もうひとつ、この映画に味付けをしているのは、近所の釣り堀常連客である齊藤(カンニング竹山)。彼からコユキがギターを教わるシーンは、ブリティシュロックファンには必見である。
齊藤の持っているさまざまなギターは、私が少年時代に憧れたギターたち。そのギターをとっかえひっかえ持ち出しては、元ネタがわかるギターフレーズを弾きまくる齊藤……
ウンウン、そのフレーズ全部弾いたことあるよ! でも“リッケンバッカー”でそのフレーズは弾かないでしょう!!(笑)
また、犬の名前はベックで、オウムの名前はペイジ。
ブリティシュロック世代、そして当HPで『おとうさんの為のギター選び』を楽しむ世代のみなさん、ホント楽しめそうでしょ?
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私もかつて平凡な毎日から音楽と出会い、充実した高校生活を送ったことを思い出した。そんな誰もが経験する、夢と希望、現実、挫折、友情がこの作品にはぎっしり詰まっている。
現在その真っ直中にいる人、かつてそこを過ぎて来た人……それぞれが自分と重ねながら観ることの出来る映画。
それが、『BECK』である。
BECK 豪華版 初回生産限定 2枚組(本編DVD+特典DVD)
BECK 全34巻完結セット(コミック)
製作発表記者会見に、水嶋ヒロら集結!
原作:ハロルド作石
監督:堤幸彦
脚本:大石哲也
出演:水嶋ヒロ /佐藤健 /桐谷健太/忽那汐里/中村蒼/向井理/カンニング竹山/松下由樹/中村獅童
配給:松竹
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.beck-movie.jp/
© 2010『BECK』製作委員会
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エンタメ : シネマピア 記:尾崎 康元(asobist編集部) 2010 / 04 / 21