シネマピア
運命のボタン
ボタンを押せば1億円が自分の手に入る。だが、その選択は自分の知らない誰かに死をもたらす。24時間以内に決断しなければ、そのチャンスはまた違う誰かのもとに渡ってしまう。欲か、モラルか。想像の中でだけなら多くの人が「押さない」選択をとるだろう。だが、実際にそのボタンが目の前にあり、自分の手で触れる状態にあったのなら、現実にはどうなるだろうか。
とある日の早朝、ノーマ(キャメロン・ディアス)とアーサー(ジェームズ・マースデン)夫妻の玄関先に赤いボタン付きの箱が置かれていた。その日の夕方には、スチュワート(フランク・ランジェラ)と名乗る紳士が夫妻宅に現れ、「ボタンを押せば、あなたは1億円を受け取る。ただし見知らぬ誰かが死ぬ。期限は24時間」と告げたのだ。道徳的ジレンマに迷った挙げ句、夫妻が下した決断は彼らの人生に想像もつかない事態をもたらし始める……。
『ドニー・ダーコ』で世界中に熱狂的ファンを生み出した1975年生まれの若き鬼才、リチャード・ケリーが再びメガホンをとった本作。前作同様、ねっとりと重厚で決して明るくはない質感はそのままに、スティーヴン・キングがもっとも影響を受けたという伝説の作家、リチャード・マシスンの同タイトルを原作に、1度観たら何日も頭を離れないような“別世界”をまたもや我々の目の前に現してくれたのだ。
妻役のノーマを演じるのはキャメロン・ディアス。今までの出演作は、明るく奔放で行動派、そしてコメディテイストな役柄が圧倒的に多かったが、本作では一転、運命に翻弄されるシリアスな役柄を演じる。年を経て深みが増したそのほうれい線が、余計に彼女の悲劇を浮き立たせる。
1億円でなくとも、我々のモラルを問う選択肢はそこかしこに転がっている。誰も見ていないからと言って、自分が助かるからと言って、自分の家族や友人が助かると言って、誰かを犠牲にしてはいないか。これから死ぬまで続く人生の中で、目に見えない“ボタン”を押さずにいられるだろうか。スクリーンから流れ出る圧倒的な映像は、そうした深遠な問いを我々に投げかけるのだ。
運命のボタン(Blu-ray)
運命のボタン(文庫)
原作:リチャード・マシスン『運命のボタン』
監督:リチャード・ケリー
脚本:リチャード・ケリー
出演:キャメロン・ディアス /ジェームズ・マースデン /フランク・ランジェラ
配給:ショウゲート
ジャンル:洋画
公式サイト:http://unmeino.jp/pc.html
© 2009 MRC II DISTRIBUTION COMPANY, LP. ALL RIGHTS RESERVED
Tweet |