シネマピア
SR サイタマノラッパー2〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜
若いころはイケていたミュージシャンにも、いつかは“老い”が訪れる。男子は老けて貫禄が出るやも知れぬが、女子がイケてるオバサンになるのはなかなか難しい。増えるシワ、たるむ肌、崩れる体形、減るばかりのモテ度、若さが金にならなくなる虚しさ、叶わなかった夢、のしかかる生活……。本作はそんな彼女たちの悲惨な現実を淡々と描いた綴る物語である。
その昔、群馬の山奥で結成された女子だけのラップチーム。女子高生たちが奏でるラップは当時新鮮だったが、今やヒップホップ自体のブームも過ぎ去り、社会人になった彼女たちは地味な日常を送るのみ。そんなある日、とある出来事をきっかけにチームの再結成、そして再びのライブ演奏を目指し始めるが……。
花を咲かせきったと同時に訪れる「枯れ」への道。アラサーやアラフォー、アラフィフにならなくとも、20代のいくらかを過ぎれば、年をとるたびに如実に感じてしまう衰え。特に女子ミュージシャンなどは10代こそが華で、20代に突入したらそれだけで商品価値が下がるとも囁かれる。本作の女子たちもアツいアツい志しと思いつきだけで目標に突っ走るわけたが、現実は無常にも彼女たちの目の前に立ちはだかる。女子ならではのその悩みはあまりにもリアルに描かれ、性別としては Female である筆者も思わず複雑な気持ちにさせられてしまうのだ。
即興で相手とバトルするという「フリースタイル」という手法で歌われる見事なラップが劇中にしばしば現れる。ときにはちゃんと韻を踏み、ときにはそうでなくただ心情を吐露し……実際に日常でこんなふうにラップで会話するということもないのだろうが、そうして形成された場はさながらミュージカルのように画面を言葉の花で彩る。特に、クライマックスで訪れるノンカット10分にも及ぶ長回しでのラップシーンは圧巻というほかない。
メジャーとインディーの差もまったくなくなってきた音楽業界。CDを出すことや華々しいライブをすることだけがゴールではない。自分たちにとって納得のいく作品を作ること、それこそが目標であり目的であり結果であり音楽を作る者にとっての真骨頂であるという本当の意味での尊い真実を、あのラストシーンが教えてくれるのだ。
SR サイタマノラッパー2 オリジナル・サウンド・トラック
監督:入江悠
脚本:入江悠
出演:山田真歩 /安藤サクラ /桜井ふみ/増田久美子/加藤真弓/駒木根隆介/水澤紳吾/岩松了
配給:ティ・ジョイ
ジャンル:邦画
公式サイト:http://sr-movie.com/
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