シネマピア
メッセージ
様々な人の死が予見できてしまうという“メッセンジャー”。ニコラス・ケイジが『魔法使いの弟子』でファンタジックな役柄をこなしたのは記憶に新しいが、本作ではメッセンジャー役をジョン・マルコヴィッチが好演。本国フランスで120万部のベストセラーとなった原作小説の映画化に、神秘的な華を見事なまでに添えている。
ニューヨークの法律事務所に勤める敏腕弁護士のネイサンは、幼い息子を突然の病で亡くしたショックから立ち直ることができず、妻や娘を遠ざけて仕事だけに打ち込む日々を送っていた。そんな彼の元に、ある日ケイ(ジョン・マルコヴィッチ)と名乗る医師が現れる。ケイがネイサンに見せたのは、次々と人の死を予見する不思議な力。自分にも死期が近いと悟ったネイサンは離れ離れになっている妻との絆を取り戻そうとするが……。
誰もが「数週間後にあなたは死ぬ」と告げられたら、それだけで生き方は一変してしまうだろう。天国や地獄があるかどうかは抜きにして、残されるであろう家族や友人・知人にかけがえのない思い出を残そうとするか、あるいは自分勝手に好き放題に生きて朽ちるか、そのどちらかだろう。こういった設定の映画は数多くあるし、それのどれもが当然のことながらお涙ちょうだいモノである。本作も例に漏れずソレ系であるにはあるのだが、ネイサンに対するケイの不自然な態度が、とあるどんでん返しで腑に落ちる。その時点まで観る者をちゃんと騙してくれる流れは見事だ。
「家族を大切に」は世界共通言語なのだろうが、私なんかからすれば「それもイイけど、仕事も大切にね」と言いたくなる。家族も当然大切だろうが、仕事仲間が困っていても放っておくなんて、オトナとして褒められた行動ではないのだから。それともこれは、普段のキツい仕事をボイコットしたい潜在意識の現れに多くの人が共感するから、やはり潜在意識で作家がそうした描写を加えてしまうのだろうか……なんて言ったら野暮ですかね。
いずれにせよ、悲しくも尊い能力を持ってしまったジョン・マルコヴィッチのその淡々とした演技は、どこかにそんな特殊な人が実在しそうな説得力をも持って観る者に訴えかける。大切にしなければいけないのにホッタラカシにしている人がいるなら、ご覧いただいて決して損はない逸品。
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メッセージ そして、愛が残る(文庫)
原作:ギヨーム・ミュッソ『メッセージ そして、愛が残る』
監督:ジル・ブルドス
脚本:ジル・ブルドス/ミシェル・スピノザ
出演:ロマン・デュリス /ジョン・マルコヴィッチ /エヴァンジェリン・リリー
配給:日活
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.cinemacafe.net/official/message-movie/
© 2008 FIDELITE FILMS
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