シネマピア
パンドラム
宇宙船、お化け屋敷の怪。『バイオハザードIV アフターライフ』の監督ポール・W・S・アンダーソンが製作側に回って作り上げたのが本作。口コミが口コミを呼び、今でもマニアからカルト的支持を得る『イベント・ホライズン』を監督した彼だが、果たして本作はそれを超えることができただろうか。
人口が爆発的に増加し、限られた資源の争奪が頂点に達した西暦2174年。人類は地球滅亡寸前に、地球と同じ環境の惑星タニスへの移住を計画。選ばれた人間たち、そしてあらゆる動物・植物の2000万もの種を乗せ、宇宙船が旅立つ。だが、冷凍睡眠から目を覚ました船員たちには、自らの使命の記憶が殆どなかった…。
タイトルの「パンドラム」とは、映画上の設定である「パンドラム症候群」、軌道機能不全症候群の意。長期間の冷凍睡眠や閉塞空間という環境の中で現れる機能障害という架空の症状だ。“記憶が曖昧なまま船員たちが遭遇する”とある未知の恐怖は過剰なまでに観客を驚かせ、さながらお化け屋敷のよう。恋人同士で行けば、その度に彼女(または彼氏)が抱きついてくるのは間違いないだろう。
『イベント・ホライズン』のダークさをなんとなく想起させる設定がなきにしもあらずだが、まったくと言っていいほど掘り下げられていないために心理的に何も衝撃がない。その個人的な設定が伏線となって後々の展開に貢献するかと思えば、それもない。まぁ、それもこれも「睡眠前の記憶がほとんどない」設定なのだからしょうがない。2000万種が乗っているといいながら、その描写もまったくと言っていいほどないため、ワクワク感も微妙。
ただ、監督曰く「この映画はパンドラムの世界を描く3部作の1作目に過ぎない」とのことだけあり、希望溢れるラストは清々しい。しかも実際に先月、20光年先の小さな恒星「グリーズ581」という、公転している地球にもっとも似た惑星を発見したと米カリフォルニア大などの天文学者が専門誌に発表したという。地球じゃない地球への旅を疑似体験するために、アトラクションのような興奮を与えてくれる本作を見に、大スクリーンの劇場へ出かけてみてはいかが?
パンドラム ブルーレイ&DVDセット(Blu-ray)
監督:クリスチャン・アルバート
脚本:トラヴィス・ミロイ
出演:デニス・クエイド /ベン・フォスター
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
ジャンル:洋画
公式サイト:http://bd-dvd.sonypictures.jp/pandorum/
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