シネマピア
トゥルー・グリット
まず初めに、この度の東日本大震災により被災された皆様、そしてご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
この時期に娯楽作品を紹介するのはいかがなものか、というご意見もあるかもしれない。だが、被災地近くにおらずとも、地震当時の記憶のフラッシュバック、余震でままならない睡眠、そして電車ダイヤの減少や停電、テレビ等で絶え間なく放送される震災情報……
日本全国どこにいても多かれ少なかれ、その影響は日本に住むすべての人々に及んでいるだろう。そんな非常事態にさらされたなか、もともと映画鑑賞が趣味の方が普段通りに映画を観ることは、疲弊した精神を回復させるためにも必要なことなのかもしれない。そんな意味も込めつつ、私自身も当時都内で激しい揺れを経験したのちの初の映画レビューの筆をとった次第だ。
14歳の少女マティ・ロスの父親が、雇い人のトムに殺されてしまう。復讐を決意した彼女は、独眼で大酒飲みの連邦保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)と若きテキサス・レンジャーのラビーフ(マット・デイモン)を雇い、復讐の旅に向かう……。
本作はジョン・ウェインがアカデミー賞(R)主演男優賞に輝いた『勇気ある追跡』(1969年)のリメイク。いわゆるコーエン兄弟らしい毒っぽさをそこかしこに散りばめたエンタメ作である。先のアカデミー賞では作品賞や監督賞、主演男優賞等、主要5部門を含めた10部門にノミネートされるも、惜しくも受賞は果たせなかった。
マティ役のヘイリー・スタインフェルドも弱冠14歳で助演女優賞部門にノミネートされたが、やはり受賞ならず。だが、その存在感はジェフ・ブリッジスとマット・デイモンという二大スターと同等と言っても過言ではない。性格が合わないながらも同じ目的に向かわざるをえない男二人に対し、聡明さと素朴さが同居したヘイリーの演技で絶妙なバランスでのトライアングルを紡ぎだすのに成功している。
この震災により映画の公開にも影響が見られている。地震を題材とした『唐山大地震』、津波シーンで始まる『ヒア アフター』、アンソニー・ホプキンス主演のエクソシスト映画『ザ・ライト —エクソシストの真実—』が公開延期や中止となり、『映画プリキュアオールスターズDX3』は津波シーンを削除して上映される。マスコミ試写や一般試写もこの例にもれず、今週いっぱいはほとんどの試写が中止となった。
本作は現時点では公開中止との情報は入っていないが、劇場によっては公開を差し控えている場合があるため、上映案内を直接確認してからのお出かけをお薦めする。
トゥルー・グリット(Blu-ray & DVDセット)
トゥルー・グリット(文庫)
原作:チャールズ・ポーティス『トゥルー・グリット』
監督:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
脚色:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
製作:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
出演:ジェフ・ブリッジス/マット・デイモン/ヘイリー・スタインフェルド
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.truegrit.jp/
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