シネマピア
ザ・ライト -エクソシストの真実-
もともとは3月19日公開予定のところ、震災の影響で公開延期になってしまっていた本作。月が替わり期も替わって4月になると、震災後には夕方早々に店じまいをしていた巷の百貨店なども通常通りの閉店時間になり、本作もようやく1カ月弱遅れの4月9日公開と相成った。
アメリカの神学校に通うマイケル・コヴァック(コリン・オドノヒュー)は、特別信仰心が篤いわけでもない今どきの青年。恩師の神父の熱烈な推薦でバチカンのエクソシストの養成講座を受けることになったマイケルだが、悪魔の存在そのものにも懐疑的だ。そんなマイケルに神父はある人物を紹介する。一流のエクソシストと呼ばれるその男とはルーカス神父(アンソニー・ホプキンス)。だがそのやり方は正統ではなかった……。
「エクソシスト」とは、バチカン公認の正式な職業で「悪魔祓い」の意。この言葉を聞くと当然思い浮かべるのは、1973年公開の『エクソシスト』。
センセーショナルな映像でも話題となった作品だが、となると当然、本作においても恐ろしく悍ましい映像があるのでは? そんな作品が今の時期、この日本に相応しいのか?と疑問に思われる向きは少なくないだろう。
もちろん、そうした系統の作品なのだから危惧される映像はないわけではない。だが、幸か不幸か、本作のそうした映像は(“ハリウッドナイズド”されたからかどうか知らないが)まったく怖くない。
役者の表情もそれなりに怖そうではあるのだが、いわゆる「悪魔」といった存在が憑依したかのような、心の底からぞっとくる恐ろしさはない。怖いもの見たさでそうした映像を見たあとに必ずと言っていいほど眠れなくなるこの私が、鑑賞後のその夜にはなんの問題もなく熟睡できてしまったのだ。
本来なら、この「怖くなさ」はホラー作品としては評価を落としてしまうだろう。だが、今の時期、ことこの日本という国で公開するにあたっては絶妙なサジ加減だといえる。
ホラー作品でありながら、観客を恐怖のどん底へ落とすことはせず、逆に大いなる希望を含んだエンタメ作として成立しているのだから。クライマックスで負から正へと鮮やかな転換を図るあの台詞も、今の日本にこそ必要なメンタリティなのではないだろうか。
まだまだ余震の心配は絶えないが、経済的自粛で日本全体が沈んでしまわぬよう、素晴らしい作品をたくさん観て個の心と日本経済を豊かにすることが、ひいては被災地の復興にも繋がる。また、上映中の映画館は真っ暗なので、実は節電にも寄与している。
『羊たちの沈黙』、『ハンニバル』の名優アンソニー・ホプキンスの怪演も見事。今の時期にぴったりなこの作品、ホラー嫌いでなければ、ぜひとも劇場でチェックしていただきたい良作だ。
ザ・ライト -エクソシストの真実-(Blu-ray&DVDセット 初回限定生産)
原作:ザ・ライト -エクソシストの真実-(小学館文庫)
監督:ミカエル・ハフストローム
脚本:マイケル・ペトローニ
出演:アンソニー・ホプキンス/コリン・オドノヒュー/アリーシー・ブラガ/ルトガー・ハウアー
ジャンル:洋画
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/therite/index.html
© 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC
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