シネマピア
まほろ駅前多田便利軒
ペットの世話、塾の送り迎え代行、納屋の整理——そんな仕事のはずだった。
東京郊外のまほろ市で便利屋を営むバツイチ男・多田啓介(瑛太)のもとに、ある年の正月、中学の同級生・行天春彦(松田龍平)が転がり込んでくる。しっかり者と変わり者。水と油のような二人の便利屋に集まるのは、どこかきな臭いワケありの依頼人たち。なんだかんだと放っとけない性格の二人は、他人の人生に深く入り込んで行くが、絶妙なコンビプレーで痛快に依頼を解決する。やがて多田と行天はある事件に巻き込まれ、自らが抱える忘れられない過去と向き合うことになる——。
第135回直木賞を受賞した三浦しをん作『まほろ駅前多田便利軒』。
この物語は女性を中心に人気となり、50万部を超えるベストセラーに。2009年には外伝『まほろ駅前番外地』が刊行され、現在は『週刊文春』にて続編『まほろ駅前狂騒曲』が連載中。また、『花とゆめ』からコミックスも発売中だ。
主演の瑛太と松田龍平の共演は今作で4作目。松田龍平の主演作『青い春』(02年)で映画デビューを果たした瑛太、その後『ナイン・ソウルズ』(03年)、『アヒルと鴨のコインロッカー』(04年)に続いての競演作が本作だ。ちなみに、この二人はプライベートでも友人関係にあるらしい。
成熟した二人の演技対決、なんと言ってもこれが映画のみどころ。長まわしのシーンでの静かな演技の中に“心に深い傷を負った人生を器用に生きられない”様子を感じることができる。行天の「誰かに必要とされるってことは、誰かの希望になるってことでしょ」との囁きは心に染み、塾通いの小学生へのセリフは子供には残酷かもしれないが、大きな説得力がある。この映画にはそんな素敵な囁きが数多く出て来ます。
二人に関わることで、どこか心に傷を負った人たちが、ほんのちょっとだけ幸せになっていく、この微妙さが逆に胸を熱くさせられることになる。現実とは映画のように(これも映画ですけど)正義のヒーローが現れてすべてを解決してくれるわけではなく、この微妙なリアル感のある小さな出来事こそが、本当の心の再生につながるんじゃないかと思わせる。
エンドロールで流れる、二人に関わった人たちのその後は、なんだか気持ちがほんわかとさせられます。 さえない、ダメなバツイチ二人ですが、そこはイケ面も合わせてダメ人間でも格好イイ!! そんな二人にちょっとだけ温かい気持ちにさせてもらうのも、この時期なんだかイイかもしれません。
バディ映画(主人公が二人一組で活躍する映画)の代表作になりそうなこの一本、自称コロンビア人の娼婦や臆病な麻薬の密売人など、どことなく世界感がドラマ『探偵物語』(松田龍平の父、松田優作主演)を連想させ、優作ファンにもおすすめですよ。
今回はおまけで完成披露試写会の模様もどうぞ!
★完成披露試写会に主演の瑛太、松田龍平、大森監督と子役の横山幸汰登場
Q:映画化のきっかけを教えてください。
監督:プロデューサーにやれって言われました(笑)。原作も読んで楽しかったし、二人のキャラクターも面白い。きっといい映画になると思いました。はじめは脚本だけだったんですが、監督もやることになりました。
Q:瑛太、松田龍平と映画を作ってみて、いかがでしたか
監督:二人の作る空気感がこの映画の見どころです。フレームの中でイキイキとしていました。二人をキャスティングして、細かいことはあえて言わずに自由に演技してもらった。場所だけ与えた感じかな。二人の演技を邪魔しないで見ていましたよ。
Q:四度目の共演になりますが……?
瑛太:今回、共演する前から楽しみにしてました。元からの知り合いですが、現場が始まって緊張感があり、作品を楽しめ、いい時間を過ごせました。
松田:瑛太と共演することで生まれた雰囲気、そんな空気感が映画になっています。
Q:由良を演じた横山幸汰くんは、二人と共演してみてどうでしたか?
横山:休憩中にサッカーをしたり、ゲームをしたりしてくれて楽しかったです。
Q:逆にお二人は?
瑛太:正直で、本当に素敵な俳優です。幸汰くんも緊張感を持って現場にいました。由良公が生きてるなと感じました。
Q:最後にみなさんにメッセージをお願いいたします。
横山:頑張ったのでみてください。
松田:楽しんでくれればうれしいです。
瑛太:今、大変な状況ではありますが、東京にいる人たちに見ていただき、この映画を盛りあげてほしい。エンターテインメントを盛り上げて、落ち込まないようにしていきたいです。
監督:先日の地震の映像などをみて、物の考え方が変わりました。この作品は地震の前に作った作品ではありますが、今、みなさんに見ていただいても恥ずかしくない作品ですよ。
(完成披露試写会記事提供=配給会社)
まほろ駅前多田便利軒 プレミアム・エディション 2枚組(Blu-ray)
原作:まほろ駅前多田便利軒
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣
出演:瑛太/松田龍平
配給:アスミック・エース
ジャンル:邦画
公式サイト:http://mahoro.asmik-ace.co.jp/
© 2011「まほろ駅前多田便利軒」製作委員会
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エンタメ : シネマピア 記:尾崎 康元(asobist編集部) 2011 / 04 / 18