シネマピア
岳 –ガク–
昨今は「山ガール」なる呼称で、女子たちに山登りがブームだ。累計330万部の大ベストセラーコミックを原作とした本作は、原作のファンだという小栗旬を主人公に、そしてヒロインに長澤まさみを配して綴る、心温まるヒューマン・ドラマだ。
山岳救助ボランティアとして登山者たちの命を守る島崎三歩(小栗旬)。三歩の“暮らす”山にやってきた新人救助隊員の椎名久美(長澤まさみ)は、持ち前の気の強さから過酷な山の現実に立ち向かおうとするが、隊長の野田正人(佐々木蔵之介)らが下す「プロ」の立場からの指示に素直に従うことができないでいた……。
山の申し子と言わんばかりの明るい性格の三歩。どんな局面でもめげず、諦めず、笑顔を絶やさない彼を、原作の雰囲気そのままに小栗旬が熱演。雪山初心者、そして高所恐怖症だったにも関わらず、綿密なトレーニングの末に「どこからどう見ても三歩」の域に達した小栗。明るいにもほどがあるその明るさや、その弊害(?)から生じる無神経ぶりも含め、誰しもが彼に好意を抱いてしまう「三歩マジック」で観客の心を鷲掴みにする。一方、自分なりの人道的考えから「我」を通そうとする久美を演じる長澤まさみも、組織の中で揉まれて成長する若き女性隊員を果敢に演じる。
思えば山というものは恐ろしいもので、楽しみに行くにも関わらず、その道中は苦しく、いつでも死が隣り合わせにある。遺体の処理方法が生々しく描写されているあたりなど、(あそびすと編集長と真逆で)生まれてこの方一度も跳び箱を跳んだ(跳べた)こともないインドアプロの私からすれば、ホラーに匹敵するほどの驚愕だ。だが、そんな現実を幾度も経験してきた三歩は言う。「また、山においでよ」と。この強さはどこから来るのか。大自然に直に触れ、その脅威も素晴らしさもすべて経験した彼だからこそ、滲み出てくるものなのだろう。
自然を利用し、自然を遮断して築き上げられているかのような現代文明。ときには自らの意志でそれをかなぐり捨て、自然がなければ生きてはいけないのだという「真実」を肌で感じることが必要だ。
……と頭では思いつつ、悲しきかな黒帯の運動音痴である私は、やっても「エア山ガール」が関の山だろう。そんな運動音痴系の人々でも、あたかも山に登ったかのような気にさせてくれる、壮大なロケシーンをふんだんに盛り込んだ本作。
あ、そうそう、特に小栗ファンはエンドロール後にプチ映像があるので、最後まで鑑賞することをオススメします。
岳 –ガク–(Blu-ray)
原作:石塚真一『岳』
監督:片山修
脚本:吉田智子
出演:小栗旬/長澤まさみ/佐々木蔵之介/石田卓也/市毛良枝/渡部篤郎
配給:東宝
ジャンル:邦画
公開:5月7日(土)全国東宝系ロードショー
公式サイト:http://www.gaku-movie.jp/
© 2011 「岳 –ガク–」製作委員会
© 2005 石塚真一/小学館
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