シネマピア
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密
ミステリー作家の謎の死、表向きは成功している家族たちの裏の顔、そして真犯人……! まるでアガサ・クリスティー作を観るかのような錯覚に陥る本作は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督による超大傑作。007シリーズのダニエル・クレイグ、アベンジャーズ・シリーズでキャプテン・アメリカを演じるクリス・エヴァンス、『ブレードランナー2049』でホログラムの恋人を演じたアナ・デ・アルマス、『ハロウィン』『トゥルーライズ』のジェイミー・リー・カーティス、『ヘレディタリー/継承』のトニ・コレット、『シェイプ・オブ・ウォーター』のマイケル・シャノン、『ジャンゴ 繋がれざる者』のドン・ジョンソン、そして映画界のレジェンド、クリストファー・プラマーら錚々たるスター俳優が集結して観客を煙に巻く、熱狂のノンストップ・ミステリー!
ニューヨーク、郊外。ミステリー作家として成功し、幸福な余生を送っていたハーラン(クリストファー・プラマー)の邸宅には、85歳の彼の誕生日を祝うため、家族らが集っていた。だが翌朝、ハーランは変わり果てた姿で発見される……。
あーもう、なんて面白い! テンポよい出だし、意外な人物の意外な内心、人間の表の顔と裏の顔、息をもつかせぬスリリングな展開、予想を遥かに上回るどんでん返しに次ぐどんでん返し、あらゆる伏線が回収される快感、それらすべてが皮肉とユーモアをまといながらスクリーンを爽快に駆け巡る! こう言うとただの誉め言葉のオンパレードのようだが、本当に心の底からそう思えたのだから、陳腐な言葉をこねくり回すことなく、奇をてらわずに正直にストレートに感じたままを述べるしかない。というか、本作に対して何かしら批評めいた文言を並べるのは野暮だ。
特筆すべき点は、本作は監督が1人だけで書き上げた100%オリジナル脚本による作品だということだ。動員のために大ヒット小説やコミックを原作とした映画があふれる昨今、こんなにまでも複雑でしかも完璧な映画をたった1人で作り上げるなんて、監督は天才か? そう、天才だ。名も実も兼ね備えた俳優らがこんなに大勢集まっても、その俳優らの後光に頼ることなく、彼らの才能を十二分にスクリーンに見事に出し切っている。監督は天才か? そう、天才なのだ(大事なことなので2度、言いました)。
しかも本作は、ただの素晴らしいミステリーだけでは終わらない。その芯には現代の福音が込められている。“善人は必ず最後には勝つ”のだ。だが、誰が善人で誰が悪人なのか。それは物語の最後の最後まで分からない。
そして本作のマスコミ用資料でも、監督からのお願いが丸々1ページを使って綴られている。ネタバレしないで、と。そりゃそうです、そんなの当たり前です。映画はただの情報ではありません。SNSやブログで、アクセス数を目的に消費されるネタではありません。映画とは、未知の驚きを最後まで新鮮なまま味わって感動を得るエンターテインメントです。……そりゃそうだ、別に言うまでもない。別に言うまでもないのですが(切ない思いなので2度、言いました)。
監督・脚本:ライアン・ジョンソン(『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』『LOOPER/ルーパー』)
出演:ダニエル・クレイグ(007シリーズ『No Time To Die(原題)』 )、クリス・エヴァンス(『アベンジャーズ/エンドゲーム』)、アナ・デ・アルマス(『ブレードランナー2049』)ジェイミー・リー・カーティス(『ハロウィン』)、トニ・コレット(『ヘレディタリー/継承』)、ドン・ジョンソン(『ジャンゴ 繋がれざる者』)、マイケル・シャノン(『シェイプ・オブ・ウォーター』)、キース・スタンフィールド(『ゲット・アウト』)、キャサリン・ラングフォード(NETFLIX「13の理由」)、ジェイデン・マーテル(『IT/イット”それ”が見えたら終わり』)、クリストファー・プラマー(『ゲティ家の身代金』)
配給: ロングライド
公式サイト:longride.jp/knivesout-movie
公開: 2020年1月31日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
Photo Credit: Claire Folger
Motion Picture Artwork © 2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
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