シネマピア
ドクター・ストレンジ
突然の事故により神の手を失った天才外科医ドクター・ストレンジが、魔術の力で甦る……! 独特の存在感から今や名実ともにスター俳優となったベネディクト・カンバーバッチが、1963年にマーベル・コミックスに初登場したキャラクターを熱演。天も地もまるでレゴブロックのように街並みごと崩れては再構築、崩れては再構築を繰り返す“あちらとこちら”の世界の中、“人を決して傷つけない”信念を持つドクター・ストレンジは、果たして本当に人々を救うことができるのだろうか?!
ニューヨークで外科医としての天才的手腕にあぐらをかき、常に上から目線で周囲を見下すスティーヴン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)。彼の“神の手”はどんな困難な手術でさえも必ず成功させるがゆえ、その鼻持ちならない態度に誰も文句をつけることはできない。だがある日、悲劇的な事故により彼のその手は機能を失う。絶望した彼は、ついに医学ならざるものの門戸を叩いてしまい……。
ドクター・ストレンジの座右の銘は、ヒポクラテスの「何があっても相手を傷つけない」であり、信念は「どんな命も救う」だ。命を救うことが目的の職業、医者としては至極もっともな志だ。だが、その医者が、世界を悪から救うヒーローに転職したらどうなるか。悪を倒さなければ世界が滅びる。かと言って悪者を殺しまくるのは自分の信条に反する。このジレンマが本作のストーリーをストーリーたらしめる根幹となり、よくある“悪党をガンガン殺しまくる勧善懲悪モノ”とは一線を画すことに成功している。そうした彼の苦悩を表すと同時に、ふんだんに盛り込まれたユーモアあふれるセリフや描写の数々。名優ベネディクト・カンバーバッチが絶妙な表情と言い回しで(と同時に優れた日本語訳の字幕で)本作の世界観を華麗に魅せてくれる。
魔術の指導者としてティルダ・スゥイントンがキャスティングされているのも興味深い。もともと彼女は女性とも男性ともつかない中性的な容姿を持つ異色の役者だが、それが彼女を“人間ではない存在”に見せる要素のひとつともなっている。『ナルニア国物語』の魔女役しかり、『コンスタンティン』の天使役しかり、ガッツリはまり役だ。本作でも魔術師としてその魅力を存分に発揮しているが、本作のこの役に、同じくティルダ・スゥイントンが演じた『ザ・ビーチ』の楽園のリーダー役が重なる。外側からは完璧な指導者に見えつつ、実は完璧を装っただけの、普通の人間。神でも仏でもないのだから、何かしらの欠陥を持った普通の人間。そうした人間味あふれるキャラクターの性格もまた、本作の世界観により一層の深みと、そして、ただの壮大なファンタジー・アクションに終わらない“悲しみ”をも与えているのだ。
監督:スコット・デリクソン
脚本: ジョン・スペイツ、スコット・デリクソン、C・ロバート・カーギル
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、ティルダ・スゥイントン、キウェテル・イジョフォー、レイチェル・マクアダムス、ベネディクト・ウォン、マッツ・ミケルセン
配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式HP:Marvel-japan.jp/Dr-str
公開: 2017年1月27日(金)全国ロードショー
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