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エル ELLE

ELLE1708_001.jpg 覆面の男に襲われた中年女性。だが、彼女の本性が明らかになるたび、彼女がただの被害者ではないことを観客は目の当たりにする。犯人よりも危険なのは、実は彼女なのか?! アカデミー賞主演女優賞ノミネート、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞・外国語映画賞W受賞、セザール賞(仏アカデミー賞)作品賞・主演女優賞W受賞ほか、全世界の映画祭で125ノミネート、64受賞の快挙となった本作。『氷の微笑』のポール・ヴァーホーヴェン監督が仕掛ける、人間の醜悪が入り乱れたサスペンス・ドラマ。

新鋭ゲーム会社の社長を務めるミシェルは、一人暮らしの自宅で覆面の男に襲われる。だが、その後に常識とは違った行動を取る彼女。彼女を襲ったのは、会社の共同経営者か、部下か、隣人か、家族か、友人か? そしてミシェル自身は一体、何者なのか……!?

まったく、なんちゅー映画だ。そう、確かに映画会社が謳う宣伝文句どおり、“彼女”がいちばん怪しい人物だとの前知識のみで、それ以上の情報は極力仕入れずに観るほうが、この映画はいい。こちらの推測がことごとく外れ、「え? えぇ?」と文字通りのどんでん返しを何度も何度も味わえるからだ。

ELLE1708_002.jpg ポール・ヴァーホーヴェン監督が1992年に解き放った『氷の微笑』は、マイケル・ダグラスとシャロン・ストーンの共演により世の男女たちに恐怖と興奮とを与えた。女の怖さを、これでもかこれでもかと知らしめた。その鬼才の監督に「できるだけ早く、常識を捨て去る覚悟を決める必要があった」と言わしめたのが本作の原作の小説。その狂気はあからさまに外面に現れるものではなく、登場人物一人一人の内面に潜むもの。だからこそ尚更、本作はタチが悪い。ただただ怖いだけならまだ救いがある。そうではなく、美味しそうな料理を口に入れたらかなりの量の砂粒が入っていたかのような、すべてが台無しになる後味が必ず付いてまわるのだ。登場人物たちは薄汚れた事象を自分なりのプリズムで屈折させ、自分の世界だけで通じる正しさを、真実を、善をこしらえ、自分が悪いなどとはこれっぽっちも思わない。

ミシェルは確かに、そういう人物だった。それはやがて明らかにされる彼女の生い立ちを知れば、彼女自身でさえもどうしようもないことだったのだろう。化け物のような彼女だって、運命のいたずらの被害者なのだ。

だが、彼女のスマートな身のこなしと洗練された外見から、彼女の本質を見抜くことができた人が、彼女の周囲に何人いただろうか。どす黒いタールの表面も、キラキラと虹色の輝きを見せることができる。あなたの親しい人は、あなたが信頼して心を寄せている人は、あなたの知らない顔を持ち合わせていないだろうか。日々、あなたを騙し続けてはいないだろうか。陰であなたに損害を与えてはいないだろうか。裏切ってはいないだろうか。「そんなことはない」と言い切ることはできなくなるだろう。この映画を観てしまったあとには。

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原作:フィリップ・ディジャン「エル ELLE」(ハヤカワ文庫)
監督:ポール・ヴァーホーヴェン(『ロボコップ』、『トータルリコール』、『氷の微笑』)
脚本: デヴィッド・バーク
出演:イザベル・ユペール、ローラン・ラフィット、アンヌ・コンシニ、シャルル・ベルリング、ヴィルジニー・エフィラ、ジョナ・ブロケ
配給:ギャガ
公式HP:http://gaga.ne.jp/elle
公開:8月25日、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー

© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP
 














エンタメ シネマピア    2017 / 08 / 21

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