シネマピア
シェイプ・オブ・ウォーター
声が出せない人間の女性と、アマゾン奥地に棲息する、人間ではない生物との恋……。あの『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督が、誰も観たことのないおとぎ話のような純愛物語を作り上げた! ベネチア国際映画祭でも金獅子賞を受賞する他、各地映画祭でも軒並み賞を獲得し、早くもアカデミー賞®最有力の呼び声が高い、心洗われる究極のファンタジー・ロマンスだ。
1962年、冷戦時代のアメリカ。政府の機密機関で清掃員として働くイライザは、幼い頃のトラウマから声を発することができないが、親切な同僚にも恵まれ、平凡でつましく質素な、けれどこれといった不自由もない生活を淡々と送っていた。そんなある日、厳重な警備のもと、職場に不思議な生物が運び込まれる。その生物に興味を持ち始めたイライザだったが……。
デル・トロといえば『パンズ・ラビリンス』が代表作であり、現実=リアル、そして幻想=ファンタジー、それぞれを絶妙にブレンドした手法を得意とした、唯一無二の世界観を作り上げることに長けた監督だ。本作でもその才能は遺憾なく発揮され、まるで思春期の少年少女の恋愛のような真っ直ぐな恋心を描き出した。
得体の知れないものや他とは違う異質な個体は行動の予測が立ちにくく、理解するにもエネルギーを要するので、不安要素を少なくし、集団の安全を確保するために、危険から遠ざけるために、その個体を群れから排除したい……世にある差別問題の根底にはこうした動物的本能が働いているのだろう。口のきけないイライザと、人間ではないその生物は明らかに異質な個体だ。本作は恋愛映画でもあるが、と同時に世の差別問題を暗に批判してもいる。
異質な個体は、自らが好んで異質になってしまったわけではない。何か信義にもとる行為をしているわけでもない。むしろ逆に、イライザの行為は心優しく、愛にあふれた行為だ。迫害されている者同士が、愛を貫き、愛を完結させる。見た目がどんなにグロテスクでも、その関係性がどんなに奇妙でも、その心は美しく、他の非人道的な思惑を寄せ付けない。純粋な愛には、いつも運命が助け舟を出してくれる。その舟に乗り、誰にも邪魔されることのない愛の巣へと旅立つことができる。
ラストに涙する人は少なくないだろう。特に女性は。いや、男性もではないか。例に漏れず、私もその一人だったからだ。デル・トロのこの独特の世界観に、涙の海に、是非とことんまで溺れてしまって欲しい。
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ、ヴァネッサ・テイラー
出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スツールバーグ、オクタヴィア・スペンサー
配給:20世紀フォックス映画
公開:3月1日(木)より全国ロードショー
公式HP:http://www.foxmovie-jp.com/shapeofwater/
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
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