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【映画レビュー】 パーム・スプリングス

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目が覚めると、あれ? これってまた昨日じゃないの!? 自己嫌悪ばかりだったあの一日がまた始まってしまう......! サンダンス映画祭で史上最高額で配給権が売買されたほか、米Huluのネット配信では史上最も視聴された映画となるなど、コロナ禍の映画業界に新風を巻き起こした本作。風変わりな男子役に『俺たちポップスター』のアンディ・サムバーグ、いろいろダメダメな女子役に『ONCE ダブリンの街角で』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のクリスティン・ミリオティという男女実力派俳優のダブル主演。そして『セッション』の鬼教師役で知られるベテラン、J・K・シモンズの再びの怪演からも目が離せない、タイムループ・ラブコメディ!

カリフォルニア州、砂漠の保養地パーム・スプリングス。リゾート牧場の一室で目を覚ましたナイルズ(アンディ・サムバーグ)は、恋人の親友である花嫁の結婚式に出席する。花嫁の姉、サラ(クリスティン・ミリオティ)もまた、その結婚式へ。家族の中で問題児扱いであることを自覚しているサラは、妹を祝福すべき大切な日なのにも関わらず、イマイチ気分が晴れない。スピーチを指名されたサラがなかなかステージに上がらずにいると、ナイルズが窮地を救ってくれたかに見えたが......?

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監督のマックス・バーバコウと脚本のアンディ・シアラは、本作がデビュー作というなんとも幸運なコンビだ。当時まったくの無名なのにも関わらず、この脚本が『俺たちポップスター』のアンディ・サムバーグの目に留まると、ぜひ主役を演じたいとサムバーグ自らが主演兼プロデューサーに名乗りを挙げたのだ。いや、「幸運」と言っては彼らに失礼か。それだけこの作品が面白かった、その実力の証として数々のビッグネーム達がキャスティングされての映画製作という展開なのだから。

物語は、みんな大好きループもの。ループものといえば枚挙にいとまがないが、日本の小説が原作でトム・クルーズがエイリアンと戦う『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(http://www.asobist.com/entame/cinemapia/425)、ジェイク・ギレンホールが列車爆破を阻止する『ミッション:8ミニッツ』(http://www.asobist.com/entame/cinemapia/310)等、私もこのジャンルは大大だいっ好きなので幾度もレビューに取り上げている。本作もまた大好きなリストに堂々の殿堂入りだ。

人はなぜ、いや、私はなぜこんなにもループものが好きなのだろうか。きっと、いや確実に、人生をやり直したいポイントが過去にいくつもあるからだ(まあそうだわな)。人生をやり直すと言えばタイムマシンも頭に浮かぶが、あちらは戻りたいポイントを自らの意志である程度指定できるのに対し、タイムループは自分の望みどおりには始まりと終わりのポイントを指定できない。ループは唐突に始まるし、抜け出せないし、同じ「戻る」にしても、いや、そこに戻ってもどうしてみようもないんだけど、という設定の作品も多い。人生をやり直したい願望がありつつ、さらに次に何が起こるか分からない不確実性によりハラハラの連続で、でも自分の行動次第で未来を自分の好きに動かせるかもしれないという希望も加わり、ワクワク感がより高まる。そんな様々な要素がたくさん詰まった設定だから、好きなのだ。

本作でループに巻き込まれた似た者同士の男女だが、それぞれの人生観の違いから、それぞれが(ループ内で)違う人生を歩もうとする。現状を良しとし、抜け出せない現実を諦めて楽しむ者、現状に妥協せず成長したいと願う者。その対比が切なく、その関係性がとても愛おしく思えてくる。前者の心情も痛いほどよく分かるし、後者の成功ももちろん応援したい。でもそれが突き詰められた先に待つものは……。クライマックスのあのシーンでは、いろいろな願いがないまぜになる。助けて神さま! と心の中で叫んでしまう。ラブコメなのだが、人生というものを深く考えさせてもくれるのだ。

そしてラスト。あのあとどうなるんだろう? と、一緒に観た人とあれこれ夜通し語りたい。一見、軽いノリの作品かと思いきや、実は深い示唆に富んだ傑作なのだ。
コロナ禍の昨今ではあるが、感染対策をバッチリ講じた上で、ぜひ劇場でご覧いただきたい逸品。

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監督:マックス・バーバコウ
脚本:アンディ・シアラ
出演:アンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティ、ピーター・ギャラガー、J・K・シモンズ
配給:プレシディオ
公開:4/9(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
公式サイト:palm-springs-movie.com 

© 2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

 


記:林田久美子  2021 / 03 / 08











エンタメ シネマピア   記:  2021 / 03 / 10

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