シネマピア
【映画レビュー】ハッチング―孵化―
少女が森から拾った卵から孵ったものとは……?! 2022年サンダンス映画祭(ミッドナイト部門)でプレミア上映され、ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭でもグランプリを受賞した戦慄の北欧イノセントホラー。『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)、『ボーダー 二つの世界』(18)の系譜が、北欧ホラーの新たなる扉を開く。
北欧、フィンランド。体操選手として練習に励む日々を送る12歳の少女ティンヤ。家族の動画配信が趣味の母親は、ティンヤが体操選手として勝ち上がることを目標としている。ある日、ティンヤは家族に内緒で、森からひとつの卵を拾ってくる。その卵は日に日に大きくなっていき、やがて孵化を遂げる。卵から出てきた生物とは……。
完璧な幸せの中にいるかと思われる家族。だが、どんな家族にも秘密のひとつやふたつはある。まるで友達かのようにティンヤに赤裸々に自分のプライベートを話す母親。ティンヤにとって母親は大きな存在だが、その言動から自分に不安を与える存在でもある。ティンヤの体操も母親にとっては重大な関心ごとで、過度な期待から練習の際にもティンヤに付きっ切りになる。体操の練習に励む日々のティンヤは、様々な葛藤を乗り越える手助けをその"卵"から得ることになる。ティンヤと、そして孵った"それ"との関係。それはある意味、もうひとりの自分でもある。
日々育っていく"それ"、そして"それ"の結末。物語のあと、"それ"はどんな日々を送るのだろう。
12歳の主人公ティンヤ役は、1,200人のオーディションから選ばれた奇跡の逸材。シンクロナイズドスケート(※フィギュアスケートの一種)の選手でもあるシーリ・ソラリンナがその役を勝ち取った。
『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)、『ボーダー 二つの世界』(18)の系譜ともいうべき北欧発のホラー。監督は本作が長編デビューとなる女性監督のハンナ・ベルイホルム。女性ならではの納得の独特の世界観、北欧の自然、ひんやりとした空気感に魅了される。
監督:ハンナ・ベルイホルム
脚本:イリヤ・ラウチ
出演:シーリ・ソラリンナ、ソフィア・ヘイッキラ、ヤニ・ヴォラネン、レイノ・ノルディン
配給:ギャガ
公開:4月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他にて全国順次公開
公式サイト:gaga.ne.jp/hatching/
© 2021 Silva Mysterium, Hobab, Film i Väst
記:林田久美子 2022 / 03 / 09
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