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【映画レビュー】ソフト/クワイエット

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『ゲット・アウト』『セッション』を生み出したブラムハウス・プロダクション最新作! どこにでもいそうな、それぞれ悩みを抱えたごくごく普通に見える女性たちの92分間を、わずか4日間のリハーサルののちに全編ワンショットで映像化。白人至上主義の女たちが巻き起こす、身の毛もよだつクライム・スリラー。

郊外の幼稚園に勤める教師エミリーは、教会の談話室でとある会合を開く。日頃、「白人である」という理由から逆差別を受けていると主張するなど、集った女性たちの悩みは様々だ。彼女たちは「白人が優れているのは事実」と、日頃の愚痴を語り合う。感情が高ぶった彼女たちに日常の些末な綻びが積み重なり、遊び半分で始めた悪戯が思わぬ方向に転がっていく……。

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おぞましい。実におぞましい。彼女たちの根底に流れる白人至上主義という思想は、選民思想であることからも万人には理解しえない、してはならない思想だ。誰であれ、出自や肌の色で人の価値が決まるのではない。人の価値を決めるのは、その人の生き方そのものだ。……と、私は思っているし、多くの人もまた同意見だろう。

本作では、彼女たちの根底に流れる悪しき思想が、彼女たちの人生をあらぬ方向に流してしまう。彼女たちが流れ着く先は、本人たちですら願ってなどいなかった結末だ。だが、彼女たちをそこに導いたのは、紛れもなく彼女たちのその思想だ。本来、優れているはずの人種なのだから優遇されて当たり前。優遇されないのは逆差別だから、私たちは立ち上がるべき。優遇されないのは私たちの努力が足りないんじゃなく、世の中が間違っているから。本当のことを口に出して何が悪い? と。

と同時に、人間誰しもが持つ“矛盾”もまた、炙り出される。キリストを敬う敬虔な気持ちを持ちながらも、悪びれることなくその行為に及んでしまう者もいる。……ただ、キリストもまた白人だから、そいつの心の中では何の矛盾もないのかもしれない。

本作のおぞましさは、過度に脚色されることなく淡々と描き出される。カメラワークが途切れることなく最初から最後まで“ワンショット”で、彼女たちが過ごす時間の流れをそのままなぞりながら、そのまま“体験”しながら、まるでドキュメンタリーを見ているかのように物語は進んでいく。だからこそ尚更、その“おぞましさ”はより現実味を帯びて観る者に襲い掛かる。こんなはずじゃなかったのに、誰もこんなこと望んでいなかったのに。こんなにまでも自然に、“それ”は行われてしまう。そして彼女たちのその思想が間違いであることを象徴するかのように、“それ”はあまりにも杜撰で、あまりにも綻びだらけだ。

本作のベス・デ・アラウージョ監督もまた、女性であり、中国系アメリカ人の母、ブラジル人の父の間に生まれた有色人種だ。本作は監督によるオリジナル脚本であり、監督にとっての長編デビュー作でもある。我々日本人も黄色人種であり、アメリカなどでは黄色人種の方が黒色人種よりも更に酷い差別を受けるそうだが、そんな意味でも、本作は他人ごとでは済まされない、恐ろしい作品なのだ。

この“おぞましさ”は、是非とも劇場の大スクリーンでご堪能いただきたい。


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監督・脚本:ベス・デ・アラウージョ
出演:ステファニー・エステス、オリヴィア・ルッカルディ、ダナ・ミリキャン、メリッサ・パウロ、エレノア・ピエンタ、シシー・リー、ジョン・ビーヴァーズ、ジェイデン・リーヴィット、シャノン・マホニー、レべカ・ウィギンス、ニーナ・ジョーダン、ヨウィータ・モリーナ
配給:アルバトロス・フィルム
公開:5月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開
公式サイト:soft-quiet.com 

© 2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

 


記:林田久美子  2023 / 04 / 04











エンタメ シネマピア   記:  2023 / 04 / 09

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