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【映画レビュー】ニューノーマル

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ソウルを震撼させる連続殺人事件、そしてデートアプリでマッチングした相手がとった行動とは……! 「Kホラーの巨匠」の呼称を持つチョン・ボムシク監督が、日常に潜む恐怖と絶望を、リアルに無情にそしてコミカルに描き尽くす韓国発のオムニバス・スリラー。『冬のソナタ』で一世を風靡したチェ・ジウが7年ぶりにスクリーン復帰し、その変わらぬ美貌を新たな表情から魅せつけてくれる。すべての登場人物が知らず知らずと絡み合う奇妙な日常が、観る者の心に絶望を植え付けていく……。

女ひとり、豪華なマンションで優雅な日々を送るヒョンジョン(チェ・ジウ)。だがある日、火災報知器の点検に訪れた中年男性を、怪しいと思いながらも部屋に上げてしまう。男性は意味深な笑みをたたえながら、昨今ソウルを震え上がらせている連続殺人事件について話し始める。被害者はすべて、ひとり身の女性だったと……。

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本作は、6つの章から成り立っている。ひとり暮らしの女性の話、マッチングアプリに出会いを求める男女の話、中年女性に親切にする男子生徒の話、等々。それぞれの主人公は別で、ストーリーも全くの別物だ。だが、章が進んでいく度に自ずと明らかになっていくことがある。それぞれのストーリーに現れる脇役の登場人物たちが、それぞれに密接に関連しあい、それぞれの人生に影響を及ぼしあっている、と。

思えば、我々の人生だってそうだ。「世間は広いようで狭い」ということわざがあるように、昨日出会ったばかりの人が、自分の大切な人と深い繋がりを持っていることだってある。本作の恐ろしさは、その「繋がり」の先に必ず誰かの「死」が待ち受けているところだ。その「死」は、不意に、自然に、何の前触れもなく訪れる。思いもかけぬ方法で、思いもかけぬ人物が、思いもかけぬ人物からその「死」をもたらされる。その寸前まで「死」は本性を隠し、何食わぬ顔で近づいてくる。そして突然にその仮面を脱ぎ捨て、対象を「死」で染め上げる。目的が達成されるや否や、鮮やかな手口でその「死」をまた仮面の裏に隠す。そして再び、次の標的へと向かうのだ。容赦など、微塵もすることなく。

本作は、勧善懲悪とは程遠い性質を持つ作品だ。善人にも悪人にも関係なく「死」が訪れ、あるいは悪人にも善人にも関係なく「死」は訪れない。我々が住むこの現実世界でも、必ずしも善が勝つわけではなく、必ずしも悪が蔓延るとも限らない。そのチョイスは神のみぞ知る。ランダムに見えるその結末へと向かわせるのは、何の力なのか。人はそれを運命と呼ぶのだろう。抗えないその流れに、人々はなす術を持たない。

タイトルの『ニューノーマル』、その意味は「新しい常態」。表面的には希薄で、けれど奥深くで密接に絡まり合っている我々人間の関係性。そこにあるのは、希望なのか、絶望なのか。本作か投げかけられているその問いの答えを、あなたは直視することができるだろうか。

特筆すべきは、コンビニバイト役のハ・ダイン。チョン・ボムシク監督に見いだされた期待の新人だ。彼女は本作を皮切りに、一躍スターダムへと昇りつめていくことだろう。


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監督・脚本:監督・脚本:チョン・ボムシク(『コンジアム』)
出演:チェ・ジウ(『冬のソナタ』)、イ・ユミ(『イカゲーム』)、チェ・ミンホ(SHINee)(『ザ・ファビュラス』)、 ピョ・ジフン(Block B)(『ホテル・デルーナ』)、ハ・ダイン、チョン・ドンウォン
配給:AMGエンタテインメント
公開:2024年8月16日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
公式サイト:https://newnormal-movie.jp/ 

© 2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.
 


記:林田久美子  2024 / 06 / 09











エンタメ シネマピア   記:  2024 / 06 / 10

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