シネマピア
アジャストメント
もしもあなたの周りに起こるすべての偶然が、何者かに操作されていたとしたら……? 『ブレード・ランナー 』、『トータル・リコール 』のフィリップ・K・ディックによる短編小説を世界観に据え、マット・デイモンがボーン・シリーズよろしく世界を駆け巡る。
ブルックリンのスラム街で育ち、幼いころに家族全員を亡くした経歴を持つデヴィッド・ノリス(マット・デイモン)。型破りの上院議員候補として選挙戦をリードしていた彼だが、過去のスキャンダルが発覚しライバルに逆転を許してしまう。だが、失意の彼の目の前に偶然現れたエリース(エミリー・ブラント)の言葉により、彼の人生は再び好転していくのだが……。
ほんの些細な出来事が未来を大きく変えるという理論「バタフライ効果」を故意に起こすアジャストメント・ビューロー(運命調整局)のエージェントたち。「運命を操作する」と銘打ち、一人の人間の意志を変えることなど難なくやってのけるエージェントたちなのに、デヴィッドの頭をいじって恋愛感情を操作すれば一発で問題解決だろうに、彼女と会わないよう会わないよう、物理的にだけ邪魔をしてかかるのはいささかアナログ的で鈍くさいが、そうしなければ物語にならないので、まぁこの甘さもよしとせねばならない……などと思って観ていたが、この甘い伏線に意味があったことをラストで知ることになろうとは。
かく言う私も「私が私を私と認識しているのは、私だけ? 他の皆も同じように自分を感じているの? この世界は、誰かが私にわざと見せているだけで、私が見ていないときには世界は消えているのでは?」と小学校に上がるずっと前からそんなことを考えていたので、本作の世界観は非常に興味深かった。
ボーン・シリーズか? と見紛うかのように、ブルー地にマット・デイモンの腰上ショットの予告ポスター。ボーン・シリーズを想像して出かけると少々肩すかしを食らうだろう。本作は「恋愛」を最終目標とした、いたってシンプルなラブストーリーであり、込み合ったストーリー展開や先の読めないミステリーではない。
ちなみに次作のジェイソン・ボーンを演じるのはマット・デイモンではなくジェレミー・レナー。『ヒア アフター』のように、最近のマット・デイモンは少しばかり超常的な設定で恋愛モノを演じる方向性にあるのか。まるで夢の世界のような展開の本作も、非常にファンタジックでロマンチック。決してイケメンでない彼が美女・エリースを手に入れる様は、やはり人間は外見でなく中身なんだな、と再認識させてくれる。
アジャストメント(Blu-ray)
原作:フィリップ・K・ディック『アジャストメント ――ディック短篇傑作選』
監督:ジョージ・ノルフィ
脚本:ジョージ・ノルフィ
出演:マット・デイモン/エミリー・ブラント/テレンス・スタンプ/アンソニー・マッキ―/ジョン・スラットリー/マイケル・ケリーン
配給:東宝東和
公開:5月27日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
公式HP:http://adjustment-movie.jp/
© 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
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