シネマピア
アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー
オアシスやプライマル、ジザメリ、マイブラ……錚々たるバンドを生み出したインディ・レーベル、クリエイション・レコーズ。創始者アラン・マッギーの軌跡を、本人やバンドメンバーたちが語るドキュメンタリー映画が本作だ。インディを愛しメジャーを嫌ったアラン・マッギーの栄枯盛衰が、淡々と綴られる。
スコットランドのグラスゴーで労働者階級の家庭に生まれ、鉄道員となったのちロンドンに上京したアラン・マッギー。その“耳”で原石であるバンドを見出し、世にその光を放って宝石に変える手腕で、立ち上げた自身のレーベル「クリエイション・レコーズ」を世界最大規模にまで押し上げた。だが、酒とドラッグ漬けの生活、そして魂に染みこんだ反メジャー精神がレーベルの将来を変えていく……。
アラン曰く「ただ、風変わりなアートシアター系の映画だと思ってた」。このドキュメンタリーは、退屈な記録映画ではなく確固とした娯楽性を打ち出し、本国のDVDチャートで2位を記録するほどの注目を集めた。その理由はといえば、マッギーもその才能を認めた監督のダニー・オコナーの手腕に他ならない。ドキュメンタリー作を“映画”にまで高めるには、撮りためた映像をいかに編集するかにかかっている。あのころの空気感をそのままに圧縮してスクリーン上で見事に解凍してみせる様、そしてアランという一人の仕事人間が掴む栄光とその真逆が、バンドたちの足跡に投影されたかのように繰り広げられる様は、音楽にさほど興味のない御仁にも、一種の人生訓として心を鷲掴みにされる感覚をもたらすに違いない。
「契約するときは曲の他に人柄を見る。ヒットの可能性は考えない」、「あとで(オアシスが)U2好きだと知った。知ってたら契約しなかった」、「いいバンドはレーベルのために歌うものじゃないから」、「夢は非常に大きいものだが、すべては叶えられない。ルールはどこにでもあるのだ」……きら星のような名言の数々がさりげなく織り込まれている本作。ドキュメンタリーという性質からか、聞きやすい台詞ではなく通常会話のスピードで登場人物たちが話すため、日本語字幕が通常の映画よりも早く流れ去ってしまう。一杯ひっかけたあとにでも観たい映画だが、酒量はほどほどにしたほうが字幕を追うのに苦労しないだろう。
監督:ダニー・オコナー
製作:ダニー・オコナー
音楽監督:マーク・ガードナー(Ride)
出演:アラン・マッギー/ジョー・フォスター(共同経営者)/ノエル・ギャラガー(Oasis)/ボビー・ギレスビー(Primal Scream)/ジム・リード(The Jesus & Mary Chain)/ケヴィン・シールズ(My Bloody Valentine)
提供・配給:キングレコード+iae
公開:★SUMMER SONIC 2011(東京)にて特別先行プレミア上映決定!
8月27日(土)よりシアターN渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町他、全国順次公開
公式HP:http://www.udcrs.net/
© Document Films 2010
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