シネマピア
アジョシ
この映画は韓国で「アジョシ(日本語ではマイナスイメージのダサイおじさん)」という言葉の意味までも変えてしまった。その熱狂ぶりは、観客動員数630万人突破という一大ブームを巻き起こし、年間ナンバーワンヒットの座を獲得、数々の賞を総なめにした。いったいこの作品の何が、それほどまでに人々を引きつけたのか?
テシク(ウォンビン)は、自ら孤独を選んだ。都会の片隅で質屋を営み、世間を避けるように生きている。過去のある事件が、彼から夢も希望も、未来すらも奪ったのだ。
テシクの隣に住む少女ソミ(キム・セロン)は、いつも一人ぼっちだ。クラブダンサーの母は、娘の世話よりも自分の暮らしに忙しい。ソミはテシクを“アジョシ(おじさん)”と呼び、ただ一人の友だちとして慕っていた。ある日、麻薬密売に巻き込まれた母親とともに、ソミは犯罪組織に誘拐される。
ソミを救出するために組織を追うテシクは、その背後に隠された恐るべき真実を知る。愛する者を二度と失いたくない──テシクはソミを守り抜くと決意するのだが──。
映画を観終わってひとこと、「ウォンビン、カッコ良すぎます!」
前半部分の世間を避けるようひっそりと暮らすシーンでのウォンビンは、どことなく瞳はうつろげで、髪も長く艶っぽく色気がただよう。この影のある姿に女性たちは「私がささえてあげたい!」と思うだろう……。そして後半部分ソミを助けるべく過去の自分と向き合い、決意の断髪をするシーンに、また惚れてしまう。
短髪で男らしく変身し、敵に闘いを挑むウォンビンに今度は「私も守ってほしい!」という気持ちにさせる。この作品は2パターンのウォンビンが楽しめる二度おいしい作品なのだ。
イ・ジョンボム監督が『母なる証明』を観て“変身の出来る俳優”を感じ、選んだとインタビューで語っていたが、まさにそのとおりの演技になっている。韓国男性の間で「決してデートでは観てはならない」と、噂が流れたのも納得できる。
男性陣には、オープニングから観る者を圧倒する、迫力のアクション・シーンがおすすめだ!
今回がアクション映画初挑戦となるウォンビンは、撮影開始の何カ月も前からトレーニングを積んで来た。体作りはもちろんのこと、銃とナイフの使い方を修得し、過酷な武術トレーニングも行なったという。後半のアクションシーンでは、本物の火薬も使われ、銃声が響き、何百発もの薬莢が地面に飛び散った。息をのむリアルな戦闘シーンを披露するのは、かつて見たことのない“新生ウォンビン”だ。
また、韓仏合作映画『冬の小鳥』(09年)で世界を驚愕させた天才子役キム・セロンの演技が心にしみる。愛を求める孤独な少女をけな気に演じ「おじさんを嫌いになったら、わたしには好きな人が一人もいなくなっちゃう」のセリフは涙を誘う。
この作品のタイトルである“アジョシ(おじさん)”という言葉には、血の通っていない少女を救うことが出来るという、男女だけの愛だけではなく、大人と子供との間の愛もありうるんだということが凝縮されている。ウォンビンに「愛の深さをもう一度考えるようになりました」と言わせた作品だ。
昔は隣のおじさんが何かのときに助けてくれたり協力してくれたりそんなことがあった。今の時代に他人との愛情というものを考えさせられる作品となっている。
悲しみを抱えて孤独に生きる性別も年齢も違う二人が友だちとして心を通いあわせて行く――。
繊細な演技と圧巻のアクションを見事にこなしたウォンビンをぜひ、劇場でご覧あれ。くれぐれもデートで観てはなりませんよ!
監督:イ・ジョンボム
脚本:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン/キム・セロン/キム・ヒウォン/キム・ソンオ/キム・テフン/ソン・ヨンチャン/タナヨン・ウォンタラクン
配給:東映
公開:9月17日(土)全国ロードショー
公式HP: http://ajussi2011.jp/pc/
あそびすと記者会見:映画『アジョシ』の来日記者会見にウォンビン登場!
© 2010 CJ ENTERTAINMENT INC & UNITED PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED
Tweet |
エンタメ : シネマピア 記:尾崎 康元(asobist編集部) 2011 / 09 / 09