シネマピア
コンテイジョン
治療法のないウイルスが蔓延し、逃げ惑う人類を追ういわゆるパンデミックもの。幾多の監督がそれを手掛け、様々な角度から描き続けてやまないこの不滅とも言えるテーマを、知的なアプローチで定評のある、そしてアカデミー賞受賞監督でもあるスティーブン・ソダーバーグ監督が描いた本作。
しかも監督のみならず主要キャストにもアカデミー賞俳優を贅沢なほどに揃え、パンデミックによって浮き上がる人間のエゴを皮肉たっぷりのカメラワークで綴った骨太の傑作だ。
香港出張からアメリカに戻ったベス(グウィネス・パルトロウ)。ただの風邪か時差ボケかと思っていた体調の悪さは加速度的に悪化し、たった2日後に還らぬ人となってしまった。妻の死に目にも立ち会えなかった夫のミッチ(マット・デイモン)は、妻の身に起こったことが信じられず、ただ茫然とするばかりだった。だが、時を同じくして世界各地で同じ症状で亡くなる人が多発する……。
マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレット。1作に1人でも出ているだけで多くの集客効果が見込めるこの大スターたちが、惜しげもなくスクリーンを埋め尽くす。
それだけでもかなりの価値があるところに、練りに練られた脚本が現代の“病”を浮き彫りにする。人気ブロガーがマスコミよりも力を持って人々の恐怖を煽るくだりなどは、得体の知れない“恐怖”が現れた際に「お上の情報はまやかしである」と信じて、または察知して声を上げるあたり……原発や高放射線量に怯える現代の日本の姿と重ね合わせずにはいられない。
その上、人間なら誰しも犯しそうな、様々な側面からの過ちをそこここに配置し、絶妙なドラマにも仕上げている。
自動音声応答の描写は、さすが。また、東京の描写がどう見ても東京っぽくないのは、あのタイプの眼鏡をかけている人はそうそういないからだろう。そのあたりは少々残念。
本作には、パンデミックものにありがちな、事態を劇的に救ってくれるヒーローは存在しない。ただ淡々と、実際にそうなったならこう事が運ぶであろうという“事実”が進んでいく。
それを見るにつけ、いつこうした事態が起こってもおかしくないということを念頭に置いて生きねば……と思わず襟を正してしまうのである。
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
出演:マリオン・コティヤール/マット・デイモン/ローレンス・フィッシュバーン/ジュード・ロウ/グウィネス・パルトロウ/ケイト・ウィンスレット
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:11月12日(土)新宿ピカデリー 他 全国ロードショー
公式HP:www.contagion.jp
©2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
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