シネマピア
パーフェクト・センス
嗅覚、味覚、聴覚、視覚、そして……五感が次々と消えていく奇病が全人類を襲うなか、出会い、愛し合う二人の男女。ユアン・マクレガー主演の本作は、単なる疫病ものの終末パニック映画ではない。極限の状況において愛し合う恋人たちを描いたラブストーリーなのだ。
グラスゴーの研究施設に勤務するスーザン(エヴァ・グリーン)。運び込まれた急患の患者は、突然の悲しみに襲われたのちに嗅覚を失ったという。
しかも、この症状を訴える患者はこの24時間内に世界各地で報告されていた。そうしたなか、スーザンは近所の店のシェフ、マイケル(ユアン・マクレガー)と出会い……。
公開時期が近かったせいか、正直なところどうしても『コンテイジョン』と比べてしまったのだが、似たような状況下で物語は展開されるものの、実はまったく異なるテーマを描いている。『コンテイジョン』は疫病が流行っていく過程をマクロからクールに描いているが、本作はマイケルとスーザンのミクロな恋物語が主軸だ。
よって、パニック映画を期待して観に出かけるのは少しお門違いであり、オトナの男と女の恋愛ものとしてスクリーンに向かうのが本作における正しい鑑賞の心構えだ。
部屋にテレビはあるのにテレビでの報道シーンがないこと、嗅覚と味覚は密接に関係しているにも関わらず、嗅覚を失っても味覚は決定的なダメージを受けていなさそうなこと、自分の声が聞こえないと発音もままならないはずなのだが流暢に話していること、また、某登場人物はどうやら自分のケータイでSMSを使えないらしいこと(ただ単にパニックに陥り思いつかなかっただけかもしれないが)……等々、細かいリアリティを追及すればキリがないが、大金を投じたハリウッド映画でもあるまいし、そうした点を揶揄するのは野暮だろう。すべてを失いつつあるなかで研ぎ澄まされる純粋な感情……それをこそ味わうのが本作の醍醐味なのだ。
監督:デヴィッド・マッケンジー
脚本:キム・フォップス・オーカソン
出演:ユアン・マクレガー/エヴァ・グリーン/ユエン・ブレムナー/コニー・ニールセン/スティーヴン・ディレイン/デニス・ローソン
公開:2012年1月7日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
公式HP:www.perfectsense.jp
©Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010
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