シネマピア
テイク・シェルター
巨大竜巻の悪夢を見始めた男が、家族を守るためにシェルターを作り始める。それが現実となるのか、果たしてただの妄想か……。『アバター 』、『スカイライン―征服―』のスタッフがVFXを担当し、じっとりとした恐怖を観客に植え付ける。
田舎町の工事現場で働き、妻、そして耳の不自由な娘と三人で、慎ましいながらも幸せに暮らす男、カーティス(マイケル・シャノン)。だがある時から、たびたび大災害の悪夢に悩まされるようになる。その悪夢はあまりにもリアルで、彼の日常生活にも影響を及ぼしていく。耐え切れなくなった彼はついに、自宅の庭にシェルターを作り始めるが……。
ある意味、カーティスの状況は今の日本にも通じるものがある。「低線量被曝は危険。外出時にはN95マスクを着用し、日本の西側かまたは海外の食物しか食べない」という危険派と、「政府やテレビの言うことは正しいのだから、東北の農作物を食べて応援しよう」という安全派。
カーティスは無論、前者だ。悪夢はカーティスにしか見えていないから、当然のことながら異常者扱いをされ、勤務先や家族にまでその悪影響が及ぶ。放射線にしてもこの悪夢同様、肉眼には見えないわけで、あちらの学者の言うことが正しいのか、こちらの学者の学説のほうが正しいのか判断がつかず、だからこそこうした危険派と安全派が入り乱れている。神もまた「目に見えない」という点から、さながら宗教戦争の様相ともなっているかのようだ。
VFXチームによる視覚効果は、彼らが手がけたハリウッド系ほどの派手さはない。ひょっとしたら明日にでも起こりうるのではないかという程度のリアルさの、抑え気味の演出だ。あくまでも本作の主軸はカーティスの異常行動、そしてそれが引き起こす周囲の人たちとの軋轢なのだ。竜巻が世界を壊してしまう前に、彼を取り巻く人間関係、そして彼の精神自体が崩壊してしまうのではないかという恐怖。まだ起こってもいない将来の妄想が彼を壊していく、それこそが恐怖なのだと言わんばかりに。
本作の結末は劇場で確認していただくとして、今の日本の未来の結末はまだわかっていない。数年後に晩発性放射線障害に苦しむことになるのか、それとも何も起こらないのか。カーティスの行動は、この日本において今、自分がどう生きるべきかを考えるきっかけを再認識させてくれよう。
監督・脚本:ジェフ・ニコルズ
出演:マイケル・シャノン/ジェシカ・チャスティン/トーヴァ・スチュワート
配給:プレシディオ
公開:3月24日(土)、新宿バルト9他全国ロードショー
公式HP:take-shelter-movie.com
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