シネマピア
推理作家ポー 最期の5日間
『モルグ街の殺人 』、『黒猫 』、『アッシャー家の崩壊 』等の名作を世に残し、後にコナン・ドイルやH・G・ウェルズらにも多大な影響を与えたアメリカの文豪、エドガー・アラン・ポー。彼がなぜ死に至ったのかは今でもまだ謎に包まれており、本作はその最期の5日間を新たな解釈で描いた意欲的なフィクションだ。
1849年、アメリカ。殺人事件の現場に駆け付けたエメット刑事(ルーク・エヴァンス)は、血まみれの母娘の遺体を目にする。完全密室殺人かと思えたそのトリックや殺害方法は、高名な作家エドガー・アラン・ポー(ジョン・キューザック)の推理小説、『モルグ街の殺人』に酷似していた。しかし事件はそれだけでは終わらず、彼の作品を模倣した殺人事件が次々と起こっていく……。
ディズニー配給作品といえば、ご存じのとおり「夢を売るディズニー」なだけに、今までは凄惨なシーンが映画に取り入れられることはなかった。だが本作は違う。これまでのディズニーがまるで別会社になったかのような、目を覆うほどのグロい殺戮シーンが見受けられる。この大胆な変身の理由は定かではないが、美しさだけを追求して説得力のない作品になるよりも、ストーリーに応じて盛大に鮮血を吹き飛ばすほうが映画の描写としては妥当だろう。
ポーといえば私がまだ小学生の時分、父親が晩酌時に『アッシャー家の崩壊』などのあらすじを語って聞かせてくれたことを思い出す。当時は子供心にもそのストーリーに身震いがしたものだが、そうした触れ方でなくとも、ポーの作品は誰もが一度は目に、または耳にしたことがあるのではないだろうか。本作は、ポーが残した数々の作品のエッセンスを散りばめつつ、サスペンスフルなミステリーに仕上げている。ポーファンには圧巻だろう。ラストのポーの行動は少し無理があるといえばある。だが、父は彼が一歳の時に家を出ていき、母は彼の幼少時に肺病で亡くなり、彼を引き取ったアラン家には正式な養子として迎えられなかったという。そうした不孝な家庭環境が故に歪んだ彼の性格、それこそがあのラストを導いた、と言われればそう納得できなくもない。これを機に一気に老け役にシフトしたい感があるジョン・キューザックの演技が光る、確かな逸品だ。
監督:ジェームズ・マクティーグ
脚本:ハンナ・シェイクスピア/ベン・リヴィングストン
出演:ジョン・キューザック/ルーク・エヴァンス/アリス・イヴ/ブレンダン・グリーソン
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
公開:10月12日(金)丸の内ルーブルほか全国ロードショー
公式HP:http://poe5days.jp
©2011 Incentive Film Productions, LLC. All rights reserved.
Tweet |