シネマピア
希望の国
「何カ月後でも何年後でもなく、今でなければ」と思いを胸に、鬼才・園子温監督が現代日本の最大のタブーである原発、そして放射能汚染の脅威に挑んだ、注目必至の意欲作。
東日本大震災から数年後、20XX年の日本。長島県で酪農業を営む老夫婦・小野、そしてその息子と嫁の4人家族は、なんの変哲もない、ささやかな幸せに満ちた日常を送っていた。だがその生活も、あの震災と同様の大地震によってすっかり様変わりしてしまう。小野の自宅は原発から至近距離にあったのだ。隣家は警戒区域に指定されて強制的に家を追われるが、小野宅は道路一本を隔てて避難区域外となる……。
今の日本は、大きく分けてふたつの派閥が対峙している。原発推進派と反対派、政府の言う「安全です」を信じる人々と、独自に様々な情報を取り入れて政府の嘘にだまされまいとする人々。無論、それぞれに言い分はある。論拠とする学説も違う。
本作が描くのは、汚染の脅威にさらされて人生の修正を余儀なくされる人々だ。不本意な理由には抗うすべもなく、彼らの人生は強制的にねじ曲がっていく。TOKIOのCMのように、何年後にしか結果がわからない「多少」の被爆はものともせずに悠々と暮らす人々の方が、強く正しく“普通”のように見え、そうでない人々を神経質で異常でひ弱な放射“脳”として軽蔑する世の中。放射能汚染の脅威に備えることが奇異の目で見られ、無頓着なほうが英雄のように称えられる世の中。監督がつぶさに描写するのは、現代日本のこの二派閥のせめぎ合いだ。
フィンランド原発の使用済み核燃料は地中に25万年の保管を余儀なくされ、アメリカでは砂漠に埋めるだけだという。生命、ひいては種の保存を危うくする放射性廃棄物をそんな方法でしか処理できない現実。はたして原発は善きものなのか、悪しきものなのか。本作はそのメッセージをストレートに届けてくれる。
園監督だからこそ描ける、心にグサリとクる一本。
監督・脚本:園子音
出演:夏八木勲/大谷直子/村上淳/神楽坂恵/清水優/梶原ひかり
配給:ビターズ・エンド
公開:10月20日(土)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
公式HP:http://www.kibounokuni.jp
©2012 The Land of Hope Film Partners
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