シネマピア
アウトロー
トム・クルーズに、また新たなる伝説が生まれた! どこにも定住せず、定職にも就かず、ケータイもクレカも免許証も友人も恋人も家族も持たず、何ものにも属さない流れ者ジャック・リーチャーを、トム・クルーズが演じる。『ミッション:インポッシブル 』に堂々と肩を並べる衝撃作の誕生だ。
ピッツバーグ郊外で、6発の銃弾が5人の命を奪った。あまりにもわかりやすい証拠により、即座に容疑者が逮捕される。単なる無差別殺人かと思われた事件。だが容疑を全面否認した容疑者は、弁護士ではなく「ジャック・リーチャーを呼べ」と警察に要求する……。
原作が素晴らしいのは言うまでもない。世界40言語に翻訳され、各国でベストセラーとなる人気小説だ。それが『ユージュアル・サスペクツ 』の脚本を手がけた知性派監督クリストファー・マッカリーの手にかかり、単なるアクションものではなく、深遠な謎解きが各所に仕掛けられた絶品のサスペンスともなっているのが見事。実は、原作者のチャイルド氏もジャックにIDを手渡す警官役でカメオ出演している。これはトムのアイデアで、「原作者がトムにジャックとしてのIDを渡す、という象徴的な意味もある」とトム自らが語る。
また、スタントなしで様々なアクションをこなすことで有名なトムが、迫力のカーチェイスでその歴史をまたもや塗り替えている。一歩間違えば死亡事故にも繋がりかねないところを、絶妙なハンドルさばきでこなしているそのハラハラ感といったらない。トムは私生活でも根っからの車好きというから、単なる付け焼刃でこのテクニックが身に付いたのではない。そんなリアル感がスクリーンからしっかりと伝わってくる。また、肉弾戦も凄いの一言に尽きる。齢50歳にして引き締まった肉体美、あのアクションのキレ。今までは顔メインで女性ファンのほうが多かっただろうが、この作品を機に男性ファンも増えることだろう。
『ミッション:インポッシブル』は1作目こそ衝撃だったが、残念ながら回を追うにつれて面白味は段々と薄れていった。シリーズものが持つ性(さが)と言ってしまえばそれまでだが、トムはここに来て俳優としての新たな境地を見出してくれた素晴らしい作品に出会ったと言えるだろう。その『ミッション:インポッシブル』シリーズにしても、次回作の監督は本作の監督、マッカリーに決定しているのだという。これだけのクオリティで作れる監督ならば、シリーズの息を吹き返してくれるだろうと今から期待が高まる。
本当に、心の底からこんな映画を待ち望んでいた。ラストにやっつけ感が漂ったのは少々残念だが、現実にああした事件が起こってあのような会話が交わされたなら、ああするしかなかっただろう。あのラストだからこそ逆に、この映画は「リアル」なのだ。「作風が古い」との評もあろうが、奇をてらうのではなく、真正面からの王道で攻めてもなお観客の度肝を抜く映画こそが真の傑作であると私は信じている。近年稀に見るそうした感動を、この映画は我々に届けてくれるのだ。
監督・脚色:クリストファー・マッカリー
原作:リー・チャイルド
出演:トム・クルーズ/ロザムンド・パイク/リチャード・ジェンキンス/デヴィッド・オイェロウォ/ロバート・デュヴァル/ヴェルナー・ヘルツォーク
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公開:2月1日(金)丸の内ピカデリーほか全国公開
公式HP:http://www.outlaw-movie.jp/
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