シネマピア
インポッシブル
2004年、スマトラ沖地震の津波被害から生き延びた家族。その実話をもとに、ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガーらが家族の愛と強い絆を渾身の演技で綴りあげる。3.11から2年が経ち、津波被害から様々な教訓を得てきた我が国、日本。本作はこの国の人々にどんな感情を呼び起こすのだろうか。
休暇のためにタイのビーチホテルを訪れたベネット一家。夫婦と男の子3人は、部屋の外に広がる風景に歓喜の声をあげる。目の前は美しい海だったのだ。だが、滞在3日目の12月26日、屋外プールにいた一家に、巨大な波が襲いかかり……。
実話の家族はタイ人だが、本作でそれは白人に置き換えられた。だからといって作品の表現力に何か支障が現れたわけではない。実力派のナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガーが演じることにより、悲しみ、苦しみ、痛み、不安、絶望、喜び、安堵、希望……ありとあらゆる感情の渦が、より一層現実味を増して観る者の胸に迫る。母役のナオミは本作で2度目のアカデミー賞主演女優賞にノミネート。また、意外にもユアンは父親を演じるのは本作が初めてだという。この2人の演技もさることながら、長男役のトム・ホランドもひけを取らないし、ある角度から観ればこの長男の成長の過程が物語の軸ともなっている。
本作はディザスター・ムービーではあるが、その主眼は災害そのものではなく、家族愛、そして国の垣根を超えた人間愛に注がれている。権利を主張して他者を助けようともしない者がいる一方で、利害など一切関係なく、傷ついた人々を助ける者もスクリーンに現われる。なぜこの家族が生き延びることができたのか? 30万人を超える死傷者が出た大惨事の中、それをただの偶然と言い切れるだろうか? ひたむきに生きるこの家族の、とりわけ母の生き方こそがその答えなのだろう。仰々しい言い方ではあるが、「神からのメッセージ」をも見いだせる傑作。ハンカチ無しでは顔面が水浸しになるので、どうぞバッグに忍ばせてのお出かけを忘れませぬよう。
監督: J・A・バヨナ(『永遠のこどもたち』)
脚本:セルヒオ・G・サンチェス
出演:ナオミ・ワッツ/ユアン・マクレガー/トム・ホランド/サミュエル・ジョスリン/オークリー・ペンダーガスト
配給:プレシディオ
公開:6月21日(金)、TOHO シネマズシャンテ他全国公開
公式サイト:www.impossible-movie.jp
©2012 Telecinco Cinema, S.A.U. and Apaches Entertainment, S.L.
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