シネマピア
エージェント:ライアン
『レッド・オクトーバーを追え! 』、『パトリオット・ゲーム 』、『今そこにある危機 』、『トータル・フィアーズ 』……数々の傑作を世に送り出した世界的ベストセラー作家、故トム・クランシー原作の“ジャック・ライアン”シリーズ。実写化ごとに主演俳優を変えてはヒットを生み出してきたこのシリーズだが、本作では「スター・トレック」シリーズのカーク船長役で名を上げたクリス・パインを主演に迎え、“ジャック・ライアン”の成り立ちを描くエピソードゼロを世に放つ。
表向きはウォール街の投資銀行でコンプライアンスを務め、裏ではCIA業務に勤しむジャック・ライアン(クリス・パイン)。モスクワの投資会社が示した不穏な動きを上官に報告したまではいいが、経験のない現地での業務を何故か命じられてしまう。恋人(キーラ・ナイトレイ)に巧みに嘘をつき、戸惑いながらもモスクワに赴くライアンだったが、そこでは予想だにしない現実が待ち受けていた……。
原作を用いない映画オリジナル脚本で監督を務め、自ら悪役も演じるのはケネス・ブラナー。『マイティ・ソー 』の監督であり、シェイクスピア俳優としての評価も高い彼は、13年ぶりに自身の監督作に出演するほどの熱の入れ様。他にも、ケヴィン・コスナーやキーラ・ナイトレイといったスター俳優を起用し、リブート作としての“ジャック・ライアン”シリーズをテンポよく畳みかける。
……と、お膳立てはこの上なく素晴らしいのだが、要所要所の各種様々な危機、そしてそれを救うすべを恋人であるキーラ・ナイトレイが招いてしまうというのが、なんともそれっぽくない。もっとも、過去のスパイ映画の名作でもパートナーの無知が物語そのものを作り出すという作風がないわけではない。だが、ただただ女の情念で状況をかき混ぜたかと思えば、突如芽生えたかのような知性で危機を回避してみせたりと、キャラ設定は猫の目のように変わる。ケネス・ブラナーにしても、とびきり頭のキレる悪役のはずなのに緊急連絡を無視するなど、ストーリーのために都合よくキャラが変化してしまう。このあたりはいささか残念な感が否めない。
とはいえ、そのストーリーの根幹はテロを引き金にした金融危機。現代的かつ現実味のある設定だ。日本語版字幕の監修にはテレビでお馴染みの池上彰を起用し、より幅広い層に訴えかける。アクションシーンはクリスの持ち味を充分に活かしている点も、原作に頼らない新たな旅立ちとしてはなかなかの出来ではないだろうか。次作以降の展開が無限であるというところにも期待がかかるといえよう。
キャラクター原案:トム・クランシー
監督:ケネス・ブラナー
脚本:アダム・コザッド、デヴィッド・コープ
出演:クリス・パイン、キーラ・ナイトレイ、ケヴィン・コスナー、ケネス・ブラナー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公開:2014年2月14日(金)先行公開、15日(土)全国公開
公式HP:http://www.agentryan.jp/
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