シネマピア
ローン・サバイバー
アメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズが行なったレッド・ウィング作戦が、創設以来最大の惨事を迎えてしまう。この作戦からたったひとり生還した隊員の実話小説を基に作り上げられたサバイバル・アクション超大作が本作だ。『ディパーテッド 』、『テッド 』のマーク・ウォールバーグが、その鍛え上げられた肉体を酷使しながら生死の際を演じきる。その想像を絶する3日間から、果たして目を背けずにいられるだろうか。
訓練期間中に何度も死の危険に晒され、85%が脱落するネイビー・シールズ。生き残りの15%は精鋭中の精鋭だ。2005年6月、シールズ隊員4名はタリバン指導者の狙撃のためにアフガニスタン山岳地帯へ潜入する。だが、誰もいないと思っていたその山腹に、山羊飼いたちが現れる。予想だにしなかった事態に出くわしてしまった彼らは、究極の決断を迫られることになり......。
とにもかくにも、痛そうで痛そうでまともに目を開けて観ていられないほどなのである。目を背けたくなるリアルな戦闘シーンといえば『プライベート・ライアン 』の冒頭が有名だが、本作はそれとはまた違ったベクトルで誠に誠に痛々しい。多くの戦争映画は生還する兵が複数名いる。そのため、瀕死の兵士ばかりをカメラが追うわけではなく、痛々しそうな場面は要所要所のみである。だが、本作の主役は生還するこの兵たったひとりであり、戦闘の初期から相当なダメージを与えられている。当然カメラはこの兵をメインにスポットを当てるので、映画が終わるまでずっとずっとずっと痛いままなのである。逆をいえば、この容赦ない現実こそが戦争だということを我々に教えてくれる映画なのだ。
戦争の悲惨さを、一片の救いもなくただただリアルに伝える実話作品といえば『ブラックホーク・ダウン』を思い浮かべる。ただ、本作はこの作品とは違い、実話にも関わらずそこに確かなドラマが流れている。屈強なはずのシールズ隊員が亡くなる直前、まるで精神が静かに崩壊してしまったかのような言葉を口にする。その台詞もまた、強烈で印象的だ。戦争映画でいえば『シン・レッド・ライン 』ほど緻密で複雑で計算しつくされた傑作はないと今でも思っているが、あの作品とはまったく違う質の感動を、本作は与えてくれる。
なぜ彼が生還できたのか、その理由を知った時に私の涙腺は崩壊した。だが皮肉なことに、その理由はアフガニスタン戦争にもつながったものだったのである。
テキサスのポストロックバンド、Explosions In The Sky による音楽もまた素晴らしいので、ここに特筆しておく。
妥協なく、虚飾なく、ただただリアルに戦闘の悲惨さに肉薄し、その中にひと筋の確固たるドラマを貫き通した本作は、戦争映画の新しい金字塔ともなりえるだろう。
原作: マーカス・ラトレル『アフガン、たった一人の生還』
監督・脚本: ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ、テイラー・キッチュ、エミール・ハーシュ、ベン・フォスター
配給: ポニーキャニオン/東宝東和
公開: 3月21日(金・祝) TOHOシネマズ 日本橋 他、全国ロードショー ※特別先行公開としてTOHOシネマズ 日本橋のみ、3月20日(木)公開
公式HP:http://www.lonesurvivor.jp/
©2013 Universal Pictures
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